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赤い文字 話リンク ・ストーリー ・内容 それぞれの道 序章 それぞれの道 なのはの章 それぞれの道 フェイトの章
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【ヒビノ・ミライ@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】12 No. タイトル 作者 登場人物 時間 037 クロノは大変な超人達を集めていきました ◆jiPkKgmerY 武蔵坊弁慶、アグモン、ヒビノ・ミライ、アーカード 1日目深夜 042 盟友(前編)盟友(後編) ◆WslPJpzlnU ヒビノ・ミライ、アグモン、ヴィータ、アーカード、クロノ・ハラオウン 1日目黎明 066 パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY 八神はやて(StS)、キング、ヒビノ・ミライ、ヴィータ、天道総司、キャロ・ル・ルシエ 1日目早朝 087 ボクらが叶える未来 仲間を信じていたい ◆7pf62HiyTE ヒビノ・ミライ 1日目朝 101 メビウスの輪から抜け出せなくて(前編)メビウスの輪から抜け出せなくて(後編) ◆gFOqjEuBs6 柊かがみ、ヒビノ・ミライ 1日目午前 106 Road to Reunion ◆9L.gxDzakI セフィロス、ヒビノ・ミライ 1日目昼 114 銀色の夜天(前編)銀色の夜天(後編) ◆7pf62HiyTE 八神はやて(StS)、クアットロ、シャマル、セフィロス、ヒビノ・ミライ 1日目昼 117 Alive a life ~タイムリミット(前編)Alive a life ~タイムリミット(後編)Alive a life ~死闘(前編)Alive a life ~死闘(後編)Alive a life ~ゲームは止まらない ◆gFOqjEuBs6 高町なのは(StS)、シェルビー・M・ペンウッド、C.C.、天道総司、キング、ゼスト・グランガイツ、万丈目準、ヒビノ・ミライ 1日目昼 131 がんばれ! ウルトラマンメビウス ◆7pf62HiyTE ヒビノ・ミライ 1日目日中 158 Kな魔王/ダークナイトKな魔王/ミライノヒカリ ◆gFOqjEuBs6 キング、ゼスト・グランガイツ、ヒビノ・ミライ 1日目夕方 168 Aの残光/強襲ソルジャーAの残光/夢と誇りをとりもどせ ◆gFOqjEuBs6 アンジール・ヒューレー、クアットロ、高町なのは(StS)、天道総司、ヒビノ・ミライ 1日目夜 173 絶望の暗雲 ◆HlLdWe.oBM アンジール・ヒューレー、クアットロ、高町なのは(StS)、天道総司、ヒビノ・ミライ、キング 1日目夜中 【ユーノ・スクライア@L change the world after story】17 No. タイトル 作者 登場人物 時間 020 不思議な出会いⅡ ◆Qpd0JbP8YI ユーノ・スクライア、ルーテシア・アルピーノ 1日目深夜 047 遠い声、遠い出会い ◆Qpd0JbP8YI ユーノ・スクライア、ルーテシア・アルピーノ 1日目黎明 059 ユーノ・スクライア司書長の女難 ◆9L.gxDzakI チンク、天上院明日香、ユーノ・スクライア、ルーテシア・アルピーノ 1日目早朝 097 Reconquista(前編)Reconquista(中編)Reconquista(後編) ◆HlLdWe.oBM ブレンヒルト・シルト、チンク、天上院明日香、ユーノ・スクライア、ルーテシア・アルピーノ、キース・レッド 1日目朝 119 明日に架ける橋 ◆Qpd0JbP8YI ユーノ・スクライア、ブレンヒルト・シルト 1日目昼 122 誇りの系譜(前編)誇りの系譜(後編) ◆HlLdWe.oBM キース・レッド、ユーノ・スクライア、ブレンヒルト・シルト 1日目昼 151 白き覚醒 ◆HlLdWe.oBM 天上院明日香、ユーノ・スクライア 1日目日中 155 貴重な貴重なサービスシーン・なのはロワ出張編 ◆Vj6e1anjAc ユーノ・スクライア 1日目夕方 167 Lを継ぐ者/SinkLを継ぐ者/あなたがいるから ◆7pf62HiyTE ユーノ・スクライア 1日目夜 179 こなたとリインと男の娘 ◆LuuKRM2PEg ユーノ・スクライア、泉こなた 1日目真夜中 184 罪罪(状態票) ◆LuuKRM2PEg 天道総司、ヴァッシュ・ザ・スタンピード、ユーノ・スクライア、高町なのは(StS)、八神はやて(StS)、スバル・ナカジマ、ヴィヴィオ、泉こなた、柊かがみ 2日目深夜 186 Pain to Pain(前編)Pain to Pain(後編) ◆HlLdWe.oBM 高町なのは(StS)、八神はやて(StS)、ユーノ・スクライア、天道総司、ヴァッシュ・ザ・スタンピード、柊かがみ、スバル・ナカジマ、ヴィヴィオ、泉こなた、アンジール・ヒューレー、キング、金居 2日目黎明 190 S少年の事件簿/殺人犯、八神はやてS少年の事件簿/フリードの来訪にヴィヴィオの涙 ◆7pf62HiyTE ヴィヴィオ、ユーノ・スクライア 2日目黎明 195 Revolution ◆LuuKRM2PEg 天道総司、ユーノ・スクライア、高町なのは(StS)、スバル・ナカジマ、ヴィヴィオ 2日目早朝 197 Round ZERO~AMBITION SECRET(前編)Round ZERO~AMBITION SECRET(後編) ◆HlLdWe.oBM 高町なのは(StS)、ユーノ・スクライア、ヴィヴィオ、スバル・ナカジマ、天道総司、キング、金居、ウーノ、ドゥーエ、オットー 2日目早朝 198 魔法少女リリカルなのはBR Stage01 ファイナルゲーム魔法少女リリカルなのはBR Stage02 心の力を極めし者魔法少女リリカルなのはBR Stage03 紡がれる絆魔法少女リリカルなのはBR Stage04 虹の星剣 ◆19OIuwPQTE 高町なのは(StS)、ユーノ・スクライア、ヴィヴィオ、キング、金居 2日目朝 199 魔法少女、これからも。(前編)魔法少女、これからも。(中編)魔法少女、これからも。(後編) ◆Vj6e1anjAc 高町なのは(StS)、ユーノ・スクライア、ヴィヴィオ、ウーノ、ドゥーエ、セッテ、オットー、ディード 2日目朝 【L@L change the world after story】9 No. タイトル 作者 登場人物 時間 005 反逆の探偵 ◆ga/ayzh9y. L、ザフィーラ 1日目深夜 023 アイズ ◆Qpd0JbP8YI L、ザフィーラ 1日目黎明 049 光が紡ぐ物語 ◆jiPkKgmerY L、ザフィーラ、アレックス、柊かがみ 1日目早朝 081 Amazing Grace(The Chains are Gone)(前編)Amazing Grace(The Chains are Gone)(後編) ◆Qpd0JbP8YI L、ザフィーラ、アレックス、柊かがみ 1日目朝 091 変わる運命(前編)変わる運命(後編) ◆HlLdWe.oBM L、ザフィーラ、アレックス、柊かがみ、万丈目準 1日目午前 121 這い寄るもの ◆9L.gxDzakI アレックス、L 1日目昼 138 Change the world ~変わる世界~ ◆vXe1ViVgVI アレックス、L、金居、アーカード 1日目日中 152 I Would Be the ***** in This Battle Royale ◆Qpd0JbP8YI L 1日目午後 157 D.C. ~ダ・カーポ~ SURVIVED.C. ~ダ・カーポ~ 戦いは終わるD.C. ~ダ・カーポ~ 予兆 ◆HlLdWe.oBM 浅倉威、柊かがみ、相川始、キング、金居、ヴィータ、キース・レッド、アレックス、L、高町なのは(StS)、天道総司、ヴィヴィオ、エネル、新庄・運切、アーカード、プレシア・テスタロッサ、リニス、『フェイト』 1日目夕方
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RXに連絡を取った直後、セッテは地面を蹴っていた。 乗っていたバイクごと浮かび上がった体は、更に突風に煽られ若干遠くへと吹き飛ばされる。 空中で体勢を立て直すセッテが見たのは、手足に光る羽をつけた姉だった。 同時に彼女が運んできたのか、もう一人セッテより頭一つ分ほど背が低く、小柄な女も進路上に降り立つ。 セッテはバイクを止めた。 トーレと、恐らくはディード。光太郎の所に行っていたせいでディードとは顔をあわせていなかったが、恐らく間違いない。 セッテ達スカリエッティの生み出した戦闘機人には、動作データの蓄積・継承の機能があり、姉妹達のデータを共有する事で完全な連携や自身の経験蓄積を補うことができた。 それを参照すれば、余り関わりのない姉妹達でも誰か位は判別する事ができる。 「トーレ姉さまと、ディードですか?」 「そうだ。セッテ、事情を聞くのは後だ。今すぐドクターの下へ戻れ」 二人に視線を走らせるセッテに、年長のトーレが口を開いた。 「ドクターの所に戻るつもりはありません。また改良してもらう必要があれば戻るかもしれませんが」 「腕ずくで戻す事になるぞ」 「トーレ姉さま。それよりも何故クアットロやドクターを自由にさせておいたのですか?」 身構える二人に、セッテは尋ねた。 痛いところを突かれたのか、トーレの動きが止まる。 「姉妹にあんな事をさせるなんて、ドゥーエ姉さまもとても怒っていましたよ」 「あの件については弁解の言葉も無い……チンクがドクターに振り回されているのは気付いていたのだが」 時間を少し稼ぐ程度のつもりだったセッテは、トーレの態度に戸惑って思わずディードの方へと目を向けた。 見れば、ディードも俯いてしまっていて、失われたのが誰であるかセッテはなんとなくわかったような気がした。 ブーメランブレードを操作する精度も下がっていたのか、何かに引っかかって水槽を運ばせていた2つが墜落する。 まだセッテの待つ相手はこの場所に現れない……セッテは時間を稼ぐ為に更に二人に言う。 どういう風に話せば話を長引かせられるかは検討もつかないが、RXらの救援を待ってルーテシアとメガーヌを引き渡すのが優先事項だった。 「ドクターもクアットロも必要なら姉妹達にあんな真似をするのにどうして協力を続けられるんですか!?」 二人の性能について、セッテは知っている。 トーレの身体能力は以前のセッテの1ランク上。 頑強な素体構築と全身の加速機能によって成される飛行を含む超高速機動能力。 そして固有装備である手足に生えた8枚の羽のようなエネルギーの刃で敵を切り裂く。 ディードの身体能力は以前のセッテの2ランク下。 能力は自身のエネルギーを使用して実体化、固定した双剣だ。 以前ならディード相手なら兎も角、トーレには勝てなかっただろう。 だが今の再改造を受けたセッテの性能なら、二人相手でもどうとでもなる。 しかし、セッテが再改造を施されたように、彼女等も同じ改造を受けていないとは言い切れなかった。 判断するには、データの更新時期が若干古い。 「お前こそどういうつもりだ!! 何故、クアットロに暴行を加えて脱走した!? 怒る気持ちは分かるが、やりすぎだ」 「それは……」 怒鳴りつけられたセッテは答えに困った。 ウーノに言ったように「カッとなってやった。反省はしていない」などとトーレにいえば、問答無用で連行される事になるのは目に見えている。 セッテが返答に窮していると、説得をするためディードも口を開いた。 「トーレ姉さま。クアットロの件はどうでもいいですが、このままでは生みの親であるドクターを裏切ることになります。それはどうかと思いますよ」 「ディード、口を慎め。同じ姉妹だぞ」 口を挟んだディードは、感情的に腕を振るいトーレに言う。 「クアットロのやったことは許せません!! オットーをあんなものに…!!」 「口を慎めと言ったぞ。それについてはもうペナルティが加えられたはずだ」 「どこがですか!? ドクターの決めたことでも、あれじゃあ余りに…」 「黙っていろ!! 今はセッテを連れて帰るのが先だ」 渋々ディードが黙りこむと、トーレはセッテに向き直った。だがセッテの方は、むしろ黙らされたディードの方へ意識を傾けて言う。 「姉妹にあんなことが起きるようなところに戻りたくないって言うのは当然でしょう? むしろ二人も一度私と来ませんか?」 「馬鹿な事を言うな。無理の無いローテーションを組むには、人数は減らせん」 「そんなはずありません。ディード、貴方はどう思います?」 「私ですか? 私は……」 「答えなくていい」 答えようとするディードをトーレが睨みつけた。 「二人とも、ドクターがお待ちだ。戻るぞ」 「ディード、ドクターの所にいても良い稼動データを取る機会も少ない。貴方にそのつもりがあるのなら、私のように強化できる」 「……トーレ姉さま!! 私は、セッテ姉さまの言う事も一理あると思います」 現在の状況に不満があったのだろう、ディードはセッテの申し出にあっさりと乗り同調を示した。だがトーレは、セッテの言葉を聴いて殺気だっていた。眉間に皺を寄せたトーレがセッテを睨みつける。 「そのつもりがあるのなら!! セッテ。お前にその気はあるんだろうな。…それなら妹達のことを考えよう」 セッテはディードを一瞥し、一呼吸置いてから答えた。 「私はドクターの下へ戻るつもりはありません。戻るとすれば、ドクターを利用するか捕らえる時になるでしょう」 「ドクターは生みの親だぞ!? 光太郎に何を吹き込まれたのか知らないが、それを裏切るのか!!」 凄むトーレの手足についたエネルギー翼が輝きを増した。 多少疑問くらいは持っているのかもしれないが、ドクターに対して忠誠心を持っているのはディードも同じらしく咎めるような目をして双剣を構えようとしていた。 「兄様は何も。全く関係ないことです!! これは、私の意志です」 「そういうことか……!!」 舌打ちしたトーレがあらぬ方向を見る。ディードの後方、かなり遠くから何かが近づいてくる音が彼女等の耳に届いた。 飛行している音だが魔導師達のものとは若干音が異なっている。トーレとセッテの脳裏に浮かんだのはバッタに似た怪人の姿だった。 「もういい、お前も黙っていろ。お前は毒されている。ウーノといい、どうしてこうも簡単に敵に惑わされる」 苛立ち、ぼやくトーレが四肢に力を込めた。徐々に大きくなっていく音に、話し合う時間はもうほぼ無くなってしまっていた。 何かのきっかけを待つ時間も無く、ディードが加速を開始し瞬時に双剣を振り上げてセッテの背後に回り込む。 背後に回ったディードが剣を振り下ろし、セッテは横に跳んで逃れる。同時に、トーレは手の届く範囲まで踏み込んで妹に拳を叩き込んだ。 セッテは冷静に、空中で光る羽をつけた腕を掴んで止めた。威力で流れていく体を地面に足を着けて固定する。 トーレを援護しようとするディードへは、進行を阻むようにブーメランブレードを飛び回らせた。 ISによって更に加速していくトーレに押されながら、セッテは腕に力を込めていった。 乾いた土を削りながら押し込まれていく四肢が薄っすら光る。腹部に埋め込まれたレリックのエネルギーが体内を巡り、拳を輝かせていた。 打ち込もうとする気配を感じたトーレがセッテの体を蹴って強引に離脱する。 蹴り飛ばされたセッテは、勢いに逆らわず土煙をあげながら地面を滑っていった。 一旦離れたトーレが空中で方向を変えて、再びセッテに襲い掛かる。セッテは素早く握り締めていた手を開き姉に向けた。 拳に留まっていた光が、桃色の光線となって撃ち出される。 かわされてしまうことを予想して、周りへも砲撃を放つが、トーレはそれも全てかわしてセッテに接近してくる。 セッテは後方へと退きながら、砲撃を撃ち続けた。 再改造を施されたセッテの脚力、空戦能力は上がっていたが繰り返される砲撃を紙一重でかわし続けながらでさえトーレのスピードはセッテを上回っていた。 荒れた地面に足を取られないように気を払う余裕もセッテにはない。ちょっとした段差や、小石につまづかないことを祈りながら、背後へと跳んでいく。 バイクに追いつかれた時点で分かっていた事だが、改めて見せられたセッテは驚き……そして足を止めた。 足止めにもなっていない砲撃も撃つのを止めたセッテは、再び拳を握りこむと全身に力を込めていった。 スカリエッティは実に凝っていて、セッテが力を引き出すための動作を幾つか用意していた。 その通りに微かに両足を開き、腕を曲げると埋め込まれたレリックが微かに光り、先程を大きく上回る力がセッテの体を巡り片方の足を中心にボウッと光る…… 感覚を研ぎ澄ませ獲物を待つセッテを見たトーレは、いつの間にかブーメランブレードを振り切り、再びセッテの背後を取ろうとするディードの腕を掴んだ。 そして二人は離脱していく。セッテは力を溜める為の構えを解いた。 すると直ぐに、空から見覚えのある姿が降りてきた。 「セッテ、無事か!!」 「はい。お久しぶりです」 バッタっぽい顔をした怪人は、何故か今日はボロい真っ赤なマントをつけていた。 ビロードっぽいような気もするが、何で出来ているのかセッテには良くわからなかった。 それに、緑色の稲妻がバッタっぽい体から大気へ流れていく。 その後方から聞こえるメガーヌ達を収容する為のものと思われるヘリの音にセッテは少し耳を傾けた。 音の感じでまだ少し時間がかかると判断したセッテは、乾いた地面に放置されている水槽等に遠慮せずRXに言う。 「暫く見ないうちに、その……イメージチェンジですか? 凄く派手ですが」 「そんなんじゃないっ、スカリエッティが……突然送りつけてきたデバイスなんだ。君達の固有武装に近いらしいが」 セッテを見て、安堵したRXは弁解するような口調で言う。 デバイス?が送られてきたのは少し前のことになる。 ゲル化した戦闘機人を倒した礼として、倒してから数日後には送られてきたのだがそのことを口にするのはRXには戸惑われた。 口調に違和感感じたのかセッテが重ねて尋ねる。 「どうしてゲル化して移動されなかったんですか?」 「それは、歩調をあわせる為だ。今俺は管理局の機動六課と協力してる。彼女等と余り離れすぎるのは良くないだろ?」 「わかりました。申し訳ありません、もしかしてゲルもどきになった姉妹のことで私達に気を使ったのかと思ってしまって……」 軽く頭を下げるセッテに、RXは何も言わなかった。二人とも仮面をつけていて、表情は変りようが無い。 「俺も聞いておきたいことがある」 「なんでしょう」 「どうしてまたスカリエッティの所からこちらに付く気になったんだ?」 「ドクターの所へはパワーアップしてもらう為に戻っただけですから。再改造が終わったので出てきました」 「よく無事だったな……」 「姉妹達は身内を洗脳したりするのは反対しますから、頼んでちゃんと見張っていてもらえば大丈夫ですよ。ウーノ姉さまが戻ったのはまた別の理由があるらしいですが」 「別の理由だって?」 「ええ。その放電もドクターのデザインですか?」 少し茶化すようにセッテが言う。 危険な代物かどうか調査する為に今まで手元に無かったが、今日の昼には調査が終わっていたらしい。 ティアナのことに関心が行っていて、デバイスは忘れられていたのだが、今回はヘリ… 他の六課の隊員達と共に出動するお陰で準備をしている間に運良くRXの手に渡された。 「アレは、俺が無駄に力を使いすぎてるせいらしい」 起動したデバイスは、血を連想するような趣味の悪い赤のマントに変り、RXの体に纏わりついた。 歳月で傷んだような風合いや、傷もあり何か意図されているのだろう。 以前ウーノに聞かせたドゥーエが誑かした男から聞き出した逸話に出てくる魔王をイメージして作ったそのデバイスをスカリエッティ自身は気に入っている。 あいにくスカリエッティが何をイメージしていたのか六課には全く伝わらなかったし、はやてだけは断固として『これは大きなマフラーだ』と言って譲らなかったが。 マントはRXの補助をするように設計されており、RXがまだ使うことは愚か意識すらしていない力の使い方を可能にすることが目的とされているようだった。 ここまではその使っていなかったキングストーンの力、それも新たに手に入れた『月の石』の力を主に使って超常現象に近いことを行ってきたのだ。 今は過剰なエネルギーが漏れ出して放電現象を起こす程度の技能しかないが。 恐らく長じれば、かつてのシャドームーンのように天候を変えたり、空間を移動することも可能になるのだろう。 「……セッテ。後で君の知っている情報を話してくれ」 「わかっています。お兄様が協力しているんですから、それくらいはやりましょう」 だが、と大した情報は持っていないというセッテはRXから簡単な話を聞きながら、バイクの所にいるルーテシアと近くに不時着したメガーヌの水槽の元へと案内する。 ヘリが到着し、荒れた砂地に転がるメガーヌ達が収容されたのは十数分後の事だった。 * 収容されたメガーヌは直ぐに医療施設へと搬送された。 ルーテシアも同施設に収容され、ザフィーラとシャマルが付き添う事になった。 無理やり連行したという経緯を聞かされたはやてが、目覚めた際にもし暴れだしたとしても対応できるようにと負荷の低い人員を回すことに決めた。 セッテだけは戦闘機人ということが判明している為、暫くは六課の宿舎に泊まることになっている。 戦闘機人の研究が禁止されている為、特殊な施設で無ければ精密検査をする事も出来ないらしく、予約も取りづらい。 説明されたRXは恐らくスバルを診ている人間なのだろうと気付いたが口には出さなかった。 以前助けた際にスバルとその姉が戦闘機人だと気付いたが、六課のどれくらいの人間がそれを把握しているのかRXは知らない。 「私達の技術に精通した人間はドクター以外殆どいませんから…検査する必要があるとも思えませんが」 「どうしてですか?」 「問題が見つかっても対処できる程の人間がいるとは思えません。いればドクターは他の分野の研究をしているはずです」 思わず尋ねたエリオは、セッテの返事にどう答えたらいいかわからないようだった。 「で、でも何かわかるかもしれませんし」 「サンプルにされるだけでしょう。何かあった場合は、お兄様に手を下して貰えばいいのです」 一緒にいたキャロがフォローしようとするが、セッテは素っ気無く返す。 返された内容に、その場に居合わせた六課の人間は動揺し、RXが強い口調で言う。 「セッテ。皆を余り驚かせないでくれ。もう少し言い方ってものがあるだろう」 「え……は、はい」 「それに俺は、お前を倒すのなんて真っ平だ」 レリックがセッテの中に埋め込まれていると知っていれば直ぐに行ったのだろう。 だが反応を隠す為の処置が施されており誰も気付きはしなかったし、何よりアルビーノ親子のことに皆の注意は引き付けられていた。 セッテがRXに従っているのでセッテに対する興味は、低くなっていた。 検査の時間までに聞く機会があるしその後も可能なことより、メガーヌの容態が気がかりだった。 そして、とりあえずセッテの一時的な拘留先は、RXの部屋ということになった。 「牢に入れられると思っていました」 「はやてちゃん達はそんなことしないって」 部屋に入り、扉が閉まるなりそう言ったセッテにRXは背中越しに答える。 彼女の好きな飲み物を出そうと冷蔵庫に向かうRXについて行きながら、セッテは部屋の中を物色する。 フェイトが持ち込んだサボテンを眺め、ヘッドギアを外して鉢に立てかけるようにして置く。 ベッドに腰掛けたセッテは光太郎が入居時に貰った枕を掴んだ。 「……こんな趣味でしたっけ?」 冷蔵庫を閉めて、二つコップを用意していたRXはメールに気付いてモニターを開いていた。 その内容を確認し、枕を掴んだセッテへ目を向ける。 「え? ああ、それはフェイトちゃんに……」 「私達がいなくなった途端女を連れ込んだわけですか」 「ば、馬鹿なことを言うなよ。やましいことはないって」 「それは良かった。変身を解かないんですか?」 慌てた様子で答えるRXに、特に気にした風も無くセッテは言う。 指摘されたRXはコップの中に粉をいれ、少量のお湯に溶かしていく。 その間変身を解くのをジッと待つセッテの視線に負けて、RXは変身を解いた。 それを見てから機嫌を良くしたのか少し笑ってからセッテは尋ねた。 「……もしやウーノ姉さまから連絡が来たんですか?」 「いや、友人の母親からだ。今度アクロバッターを持ってきてくれるらしい」 * RX達がセッテ達と合流した頃、その報告はようやく首都で休んでいた責任者達の下へと流れついていた。 騒がしいアラーム音に邪魔をされ、大柄な人間2,3人は入りそうな布団が動きを止める。 ノロノロとまた動き、顔を出したのはレジアスだった。魔法能力のない彼は、枕元の端末を叩きモニターを表示させる。 「また問題でも起きた?」 「うむ……まぁな」 レジアスが開いたモニターには急を要する報告が短い文章で書かれている。 寝ぼけ顔などを見られないように寝室に入ってからは声のみか、文章で知らせるよう言ってあった。 セッテがスカリエッティの所から脱走した事が書かれており、これを報告した者にとっては兎も角レジアスには然程急を要する用件ではなかった。 布団から裸の腕を伸ばし、安心したレジアスは枕と頭の間に挟んだ。 すぐに内容を言わないレジアスの横に顔を出したドゥーエは頬杖をついた。 裸の肩が布団から一瞬出て、布団が引き上げられてまた隠れる。 「言えないなら」 「いや、そうではない。スカリエッティの所から戦闘機人が一名、アルビーノ親子を連れて脱出したらしい……」 「フーン……誰かしら?」 「恐らくRXと行動を共にしておったセッテだろう。能力的にウーノとは考えられんし、タイミングから言って他の戦闘機人でもない」 「セッテか……今度、会ってみたいわね」 「会っておらんのか?」 「ご老人の世話に、貴方の秘書。他の時間は何処にいるっけ?」 開いたモニターの光で爪を眺めるドゥーエにレジアスは反論はしなかった。 嵌められた指輪が光りを反射していた。 「助けが必要ならワシの方でも調整しておこう」 「ええ」 モニターを閉じたレジアスは、再び灯りの消えた部屋の中で隣を見つめた。 目が慣れて、カーテンの隙間から入る街の灯りで一見興味なさそうな顔のドゥーエが見えるようになってくる。髪を弄るのをレジアスは少しの間見つめた。 秘書に成りすましているのに気付いたのは偶然だった。改造されたドゥーエの妹達の一件がなければ、不自然な所など全く出さなかっただろう。 実際、ドゥーエはご老人……レジアスの飼い主である管理局の最高評議会メンバーの傍に秘書・メンテナンス担当として潜入しているらしい。 「…………ドゥーエ。聞いておきたいことがあるのだが」 「どうしてドクターを裏切ろうとしているのか? それとも、貴方とこうなった理由?」 「まぁ、……そうだ」 今更平凡過ぎる質問だったからか、ドゥーエが鼻で笑う。 「裏切ってるつもりは無いわ。まぁ妹にあそこまでやるようなドクターには愛想が尽きたけど……スマートだから」 「スマート?」 「仕事が。治安の回復にアインヘリヤル?海のエリート達にもここまで出来るのはそうはいないでしょ。っていうか、教導隊は何百いても貴方のタイプは半分もいないでしょ」 「フン……っ、ここまでやれば、誰にでも出来る」 レジアスは最高評議会に従い、汚い仕事に手を染めた自分を嘲笑った。ドゥーエはそんなレジアスに目を向けようともしなかった。 「ゼストの遺体を引き取る事は出来なかった。評議会が、ワシの首により強固な首輪をつける為に利用するつもりなのかもしれん」 「貴方はレジアス・ゲイズ」 不意に口を開いたドゥーエによってレジアスは、弱気に愚痴を零すのを止めた。 「魔法能力が無い地上の守護者。事実上の地上本部総司令……親友が死後も侮辱されようが貴方は職務を投げたりはしない。ミッドチルダをより安全にする」 「うむ……勿論だ」 早口にまくし立てられたレジアスは、威厳たっぷりに頷いた。 その厚い胸板に、ドゥーエが頭を乗せた。薄明かりが細められた瞳にも入って綺麗に見せていた。 「でもセッテや、私の姉妹は大事にしてもらう。だって義理の妹でしょ」 「う……い、いや!!」 思わず頷きかけたレジアスは首を振ろうとして、顎を掴まれた。 肉体を強化されているドゥーエの力は見た目以上に強く、指先で掴まれているだけの頭を振る事も出来ない。 素直に返事をしなかったレジアスを責めるように、ドゥーエの爪が肉に食い込む。 だが大事にというのがどういう意味か悟っていたレジアスは頷くわけにはいかなかった。 「まさか違うって言うのかしら。だとしたら私が勘違いしてた……」 「そうではない。しかしだな。特別扱いするわけにはいかん。むしろゼスト達がああなった以上私も」 「却下。ゼストは友達!! 彼の部下は他人!! 私達の方が大事にされるべきよ!!」 「だが」 「私のISは説明したわよね。それでも?」 「? ああ、うむ……ごほん、ライアーズ・マスクだったな。自身の体を変化させる変身偽装能力だと聞いたが」 「分かってないわね……」 よからぬ事を考えているとしか思えない含みのある笑みがドゥーエの顔に広がり、彼女の能力が使用される。 何故今更顔を変えるのか、レジアスが不思議に思う間もなく、彼女は美女から幼女に変身した。 レジアスは呆気に取られて何度も瞬きをするが、掴んでいる顎の骨を軋ませてドゥーエは正気に戻してやった。 「は?」 「別に体格を変えられないわけじゃあないわ」 「ありえん……」 レジアスは頬の筋肉を引きつらせながら目を逸らした。 「だって、髪の色が自由に変えられるのよ? 身長だって変えられるわ。だからってライダーの研究に感謝したりしないけど」 「意味が分からん!! 何故そんな姿になったかが全く理解できん!!」 変身魔法を使っていかがわしい真似をする空のエリートがいるという話は聞いたことがある。 だが、汚れ仕事をするよりも遥かに罪悪感が腹の底に溜まりそうなそれを自分で試す気はレジアスにはなかった。 「ロリから熟女、髪型体型お望みのまま、演技力も別人になりきれる程完璧」 そう言ってドゥーエは逃れようとするレジアスに強引に唇を重ねた。 「出勤し易いからオーリスとの同居も受け入れたわよね。一緒にトレーニングしてもいいし、ちょっとした犯罪者なら協力してくれれば姉妹達が片付けるようになるわよね……でもゼスト達はこんなことしてくれないわ。ほら!! 私の方が大事にされるべきでしょう?」 「殆どが公の利益になっておらんだろうが!! それに奴は友で、奴の部下達もミッドの治安を守るために手を」 「大事にするなとは言ってないわ、でも!! 私達の方が大事よね? 例えば六課にいるライダーより」 「だからと言ってあからさまに便宜をぐぐ……」 顎を掴む指の力が徐々に強くなっているのか、ぐうの音も出せないレジアスは自分の顎の骨が軋む音を聞かされた。 彼女の髪の色と同じ指輪を嵌めたことをちょっと早まったかもしれんと思ったが、他の誰が聞いてもレジアスを殴りはしても同意してくれないであろうことは明白だった。 とりあえずレジアスは顎の痛みに耐えながらうまくやれば陸の戦力アップに繋がるのだからとか、言い訳を考えることにした。 前へ 目次へ 次へ
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autolink IM/S07-038 カード名:太陽娘 響 カテゴリ:キャラクター 色:緑 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:1500 ソウル:1 特徴:《音楽》・《動物》 【永】他のあなたの「高槻_やよい」がいるなら、このカードのパワーを+1000。 【起】[①]あなたは自分のキャラを1枚選び、そのターン中、パワーを+1500。 えへへ。ほらサーターアンダギーあげるぞ! 聖櫃の間1/7CVP レアリティ:C illust.田中松太郎 このカードをTCG版wikiで調べる 高槻_やよいが居るとパワーが2500になる。居るかいないかしか判別してないので、他に4枚居たとしてもパワーは2500。 ちょっと厳しいか。 起動能力は星井_美希のレストコストがなくなった代わりに、ストック消費するようになったようなもの。 そのかわりパンプ値が1500になり、ストックの余りあるかぎり使用できるようになった。 なのはStSに居たPRカードフェイト・T・ハラオウン執務官は収録されなかったので、 なにげにゲーム版ではストックのみを消費し、対象に制限なくパワーを繰り返し上昇させる起動能力は他にはない(はず)。 CPU戦でサイドアタック戦法をしてダダ余りになったストックを一気に消費して、 自分のプロフィールの最大パワーの表示を底上げしてみるのもいいかもしれない。
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マクロスなのは 第18話『ホテルアグスタ攻防戦 前編』←この前の話 『マクロスなのは』第19話「ホテルアグスタ攻防戦 後編」 シグナムが敵を発見した頃、地上の戦線に変化が起こっていた。 突然北西5キロの位置に巨大な魔力反応があったかと思えば魔法が行使され(この時の魔法はキャロの報告により召喚魔法と判明している)、同時にガジェット達の動きが変わった。 いままで陸空でガジェットが展開していても共同で組織的に何かをすることはなかったのだが、彼らは突然連携を始めたのだ。 陸戦型の進攻を阻止している陸士にⅡ型が上空からレーザーによって空襲。たまらず塹壕から飛び出した陸士に陸戦型がレーザーを集中射する。 結果、戦線は一気に総崩れになった。 「後退!六課のラインまで後退するんだ!!」 森の中に命令という名の怒声が響き渡る。しかしその声は敵の攻撃と友軍の砲火の前にすぐかき消される。もちろん各人を無線という通信回線で繋いでおりその意図は全体にすぐに伝わるが、激しい空襲と陸戦型の追撃を前になかなかうまくいかなかった。 MINIMI(軽機関銃)が放つフルオートの発砲音を轟かせながら陸士部隊の1個分隊が後退していく。 後退の援護は2人1組で構成され、片方が後退する時はもう片方が敵へと援護射撃して頭を押さえる。MINIMIに代表される分隊支援火器の登場で分隊でも容易になったこの戦術機動だが、今回の敵は手強すぎた。 後退を援護していた片方が、被弾を恐れず突入してきたⅢ型のレーザー攻撃を足に受けて転んでしまったのだ。援護射撃が止み、後退中の相方が無防備となる。 「この野郎!」 一部始終を目撃していたロバートは振り返りざまにそのガジェットⅢ型を照準すると、装填されていたカートリッジ弾を撃ち込む。だがその1発はすんでのところで〝回避〟された。 「チッ!」 ロバートは銃のセレクタレバーをフルオートにすると、トリガーを引き絞った。 レールガン方式を採用したため、この銃に薬莢はない(廃莢口は適正によってベルカ式カートリッジシステムを着けることができるよう、残されている)。そのためマガジンは純正89式小銃の約2倍の装弾数(66+1発)を誇り、まだ半分程残っているはずだ。 最初の5、6発が敵の滑るような機動で回避されたが、後退中だったあの相方が援護して十字砲火を形成。その後は命中し、途中で完全に沈黙した。 「くそ!動きまで良くなりやがった!」 吐き捨てると足を撃たれた部下に肩を貸し、すぐに後退する。 だがあることに気づいた。 その部下は足に命中弾を浴びたはずなのに外傷がなかったのだ。 「負傷者の搬送はお任せください」 「頼む!」 駆け寄ってきた隊員の左腕に赤十字の腕章を認めると、彼を託して後退援護の射撃を後方に放つ。 相方の退避を確認。即座に銃撃を止めて遮蔽物から出て後退する。その間は阿吽の呼吸で相方の援護射撃が放たれた。 しかし小隊長である自分がいつまでもこうしてはいれない。後退しながらHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)を一瞥して増援として近くにいた1人を呼び寄せた。 その間に頭に引っ掛かっていた事象を確認するためJTIDS(統合戦術情報分配システム)に届く負傷者情報を呼び寄せてみると、やはり誰1人出血を伴った負傷者が出ていなかった。このやられ具合だと軽く10人以上の重傷者が出ても不思議ではないはずだ。 その時、後方監視していた自身の89式小銃『エイトナイン』が音声とHMDで警告を発する。 『Get down!(伏せろ!)』 愛機の情報を疑いなく信じると、考える間もなく伏せる。 数瞬後、立っていたら腰あたりを薙ぐはずだったレーザーは射軸上にいたすべてを焼いていく。 それに構わず伏せたままランチャーにカートリッジ弾を装填し発砲。弾体はⅢ型のシールドを対シールド機構とその物理的な推進力を盾に突き破ると、そこで内包されていた魔力を爆発的に炎熱変換して自爆した。 目標の沈黙を確認すると後方に振り返る。薙いだレーザーは射角的に先ほどの衛生兵と負傷者を巻き込んだはずだった。しかしそこには問題なく搬送していく彼の姿があった。 「なに?」 だが攻撃が幻覚でなかった証拠に増援として来た1人の陸士が腰辺りを抱えてうずくまっていた。 「おい、大丈夫か!?」 「は、はい・・・・・・」 苦しそうに応える彼に駆け寄ってみるが、抱えていたその患部に外傷は見られなかった。これには彼も驚いたようだ。 これではっきりした。どうやら敵は非殺傷設定で攻撃しているらしかった。しかも非戦闘員を巻き込まないよう選択的に。 とにかく彼に訓練に使う魔力火傷用の簡易的な麻酔魔法をかけると、肩を貸しつつ戦線に復帰させた。 「どうやら今までの奴よりは、理性ある奴が操作してるらしいな・・・・・・」 その後ロバートの小隊は第2次防衛ラインまで後退すると、六課の4人を加えて迎撃を始めた。 (*) 上空でも突然動きの良くなった敵に翻弄されかけていた。 「まとめて、ぶち抜けぇー!」 ヴィータが鉄球を10発生成するとアイゼンで加速、向かってくるガジェットⅡ型に当てようとした。しかし───── 「なに!10機中3機だけだと!?」 驚くのも無理はない。いままで奴等が自分の攻撃の回避に成功した記憶はない。それが突然、自らの攻撃が避けられるほど動きが良くなったのだ。 しかしヴィータにはあまり関係ない。 「めんどくせぇ!アイゼン!」 「Raketen form.(ラケーテンフォルム)!」 アイゼンは1発ロードするとクラスターエンジンを展開する。 「ラケーテン、ハンマー!!」 雄たけびも高らかにそのまま敵に突貫し直接叩き潰してしまった。 (*) 『どうやら有人操作に切り替わったようだ。各員、注意して敵に当たれ』 ホークアイの指示が飛ぶ。その指示に戦術が一新された。 いままでの数に物を言わせた戦いから、いつもの戦いに。 バルキリーは空を舞い、景気良くミサイルをお見舞いする。そして魔導士部隊も砲撃を惜し気もなく撃ち込む。 外したミサイルや砲撃、ガジェットの破片は六課のザフィーラとシャマルの展開した広域バリアによってすべてがホテルとの衝突を免れた。 (*) そして六課のラインでは、すでに第256陸士部隊の全部隊が防御の正面であるホテル前のC-3エリア付近に集結。迎撃が行われていた。 『第3小隊損耗率30%!後退します』 「安心しろ、ラインは支える。後ろで休んでろ」 『了解。感謝します』 『こちらスターズ3。C-2エリアに孤立していた第4小隊第2分隊と合流。本隊と合流するため、支援願います』 「第5小隊了解。10秒後20秒間全力射撃する。その隙にこっちに走って来い!」 『スターズ3、了解』 『第2分隊、了解』 ロバートは無線から手を離すと、隊に呼びかける。 「俺の合図で〝あっち〟に20秒間全力射撃。向かってくるスターズのお嬢ちゃんと第2分隊の連中に当てるな!・・・・・・3、2、1、今だ!」 その合図に第5小隊の保有する合計25の火器が一斉に弾幕を形成した。 頭のよくなったガジェットたちはそれに当たるまいと遮蔽物に隠れる。 その隙に遅滞行動(撃っては後退、撃っては後退という戦闘機動を交互に行い、敵の進攻を遅らせる戦術的後退術)をしていていつの間にか包囲されてしまった第2分隊はスターズ3、スバル・ナカジマを先頭に走って来た。彼女は猛烈な突破力を武器に敵の群れを突貫していく。 既定の20秒が経ったときには隣にいた。 そしてさらに上空のあの赤く幼い魔導士からの空爆とオレンジ色の髪をツインテールにした二丁拳銃使いの誘導弾が、動きの止まったガジェット達を撃破していった。 (やっぱり六課は心強い!) ロバートは彼女達がいる限り、管理局は無敵だ。と実感した。 (*) ホテル東部 高度4000メートル 元々動きの良かったゴーストはバルキリー隊が対応に当たったが、更に頭の良くなったゴーストは危険な存在になっていた。 高空より侵入してきたゴースト6機は連携とりつつ接近してくる。 ホテル東部を担当することになったサジタリウス小隊はさくらの狙撃に援護されながらそれに応じた。 しかし狙撃は当たらず、天城の放ったマイクロハイマニューバミサイルの弾幕も絶妙な連携プレーで突破してきた。 これまで4カ月という訓練期間の短さをハード(機体性能)によって補ってきた感のあるバルキリー隊は苦戦を強いられることになった。 (*) ドッグファイトに持ち込まれたサジタリウス小隊の2機は徐々に分断。距離を離されていく。 『離されるな天城!』 アルト隊長の声が耳朶(じだ)をうつ。 「しかし・・・・・・くそ・・・・・・」 ゴースト3機に囲まれた自分は、さくらの支援狙撃もむなしく隊長のVF-25と完全に分断されていた。 最高速度で優越しているため、ファイターに可変して振り切ることも選択肢だろう。しかしそれでは防衛ラインに穴を開けることになり、隊長や下界の陸士達、つまり友軍を見捨てる事となる。 隊長も3機のゴースト相手では分が悪い。それが増えたら尚更だ。 天城は持ちうる技術を結集して何とかさばこうと努力するが、ゴーストの機動性、バルキリーの火力、賢い頭脳を与えられたそれは徐々に彼を追い詰めていった。 (転換装甲のキャパシティがやべぇ・・・・・・) 空戦では余剰エネルギーが最大限利用できるガウォークで戦闘しているにもかかわらず、構造維持エネルギーが限界に到達しようとしていた。それは限界を超えたとき、自機の損壊を意味する。 (そろそろ潮時かな・・・・・・) 度重なる被弾の衝撃で精神の参っていた天城は自暴自棄になっていた。 彼は左手に握るスラストレバーを45度倒してファイターに可変する。そして目前で丁度旋回してきたゴーストに狙いを定めると突撃した。余剰エネルギーの関係でPPBSは作動しない。 しかし彼は躊躇わなかった。 こちらの乱心に気づいたのか通信機ががなりたてているが、彼には聞こえない。そして目前のゴーストが視界いっぱいに広がり───── (*) 「天城ィィィーッ!!」 『天城さん!!』 アルトとさくらの声が空にこだまする。 爆発したその場所からは大量の金属片が下に力無く落ちていき、これまた大量の黒煙がその場を包んでいた。 イジェクト(緊急脱出)は・・・・・・・確認できない。 ゴーストが撤退していく。いや、ガジェット達も同じく撤退するらしい。 『そんな・・・・・・天城さん・・・・・・!』 さくらの茫然とした声が聞こえる。 「畜生!」 自らの担当した3機のうち2機を叩き落としていたアルトは、あと少しだったのに!とコックピットの内壁を叩く。 (また俺は失ったのか!?スミスやマルヤマ、ジュンのように!!) 暴発しそうな激しい感情と共に、バジュラ本星突入作戦で散って行った部下2人の顔が脳裏を過る。 しかし視線を落としたアルトは、ディスプレイの表示に息を呑んだ。 天城のVF-1BとのJTIDS(相互データリンク)が接続されたままだ。 (これは、ひょっとして・・・・・・) 顔を上げたアルトの目に飛び込んできたのは、ガウォークでホバリングしたVF-1Bだった。 『・・・・・・あれ?』 モニターに拡大された天城のアホ面(づら)が印象的だった。 (*) 「逃がしたか・・・・・・」 こちらは地下駐車場。謎の人型甲虫と遭遇したシグナムだが、取り逃がしてしまっていた。しかし〝それ〟が抱えていた箱は斬撃によって吹き飛ばされ、床に四散していた。 シグナムはそんなこと全く関しなかったが、敵は違ったようだ。身軽になった体で意外に小さな〝箱の中身〟を拾い上げ、光学迷彩を再起動して闇に消えていった。 「大丈夫ですか!?」 さっきの警備員だ。派手に戦闘をやらかしたので様子を見に来たのだろう。 「ああ。犯人はとり逃してしまったが」 「そう、ですか・・・・・・」 彼は周囲を見渡す。 めくれ上がったコンクリートの床。 深い切り傷の残る柱や壁。 最早廃車であろう高級車。etc、etc・・・ その場は破壊の限りを尽くしたような光景が広がっていた。 (*) 「ぶつかる前に相手が自爆しただとぉ?」 天城に生還の理由を聞いていたアルトが驚きの声を上げた。 彼によるとその時は気にしなかったが、特攻の瞬間なぜか相手は銃撃を止めて回避に専念したらしい。 『何か無人機のくせに端々の挙動が人間ぽかったんですよね・・・・・・まるで事故を回避しようと急ハンドルした感じでした』 天城は元々突っ込むつもりのため当然追う。VFは可変という特殊機構を持つため小回りでは負けない。 結局天城は衝突を免れないコースをとり、今まさにぶつかる!という時に自爆したらしい。 「う~ん・・・・・・」 アルトは理解出来ずに頭を捻る。 無人機なのだから戦術・戦略上必要なら自爆や特攻することはよくある。しかし突っ込む天城を撃墜して止めようとせず、全力で回避し、なおかつ回避不能とわかると自爆してくれるとは・・・・・・ 「有人操作だから術者に良心が働いたのか・・・・・・?まぁいい、とりあえず天城、もう二度とあんなことするなよ!」 『すいません・・・・・・』 天城に釘を刺すと、被害報告を待つホークアイに回線を繋ごうとした。しかし今度はさくらから通信が入った。 「どうした?」 『お願いがあります』 (おいおいなんだ、このデジャブは) アルトは一瞬躊躇うが、先を促す。 『はい。実は─────』 その願いはまたしてもアルトを驚かせた。 (*) 「まぁ箱はしかたないよ。邪魔者が強すぎただけだから。・・・・・・うん、お疲れ様。あとは中身をそのままドクターに届けてあげて」 ルーテシアはデバイスを通した通信を終えると魔法陣を解除する。 すると自らが操作していたガジェットとゴースト達の縛りが解かれた。しかし完全にではない。彼女が最後に発した命令は〝速やかな撤退〟だった。 インゼクト・ズークによってプログラムを根こそぎ書き換えられた機械達はこれに従って撤退を始めた。 「・・・・・・結局、品物の中身は何だったんだ?」 ゼストがローブを片手に聞いてくる。 「よくわかんないけど記録媒体だって。オークションに出す品物じゃなくて密輸品みたいだけど・・・・・・」 「・・・・・・そうか」 彼はそう言ってローブを手渡し、自身は交戦地帯だった所に視線を投げた。 そこでは突然攻撃を止め、撤退していくガジェット達を見送る管理局員達の姿があった。 「管理局も強くなったものだ。以前のままなら突破されていただろうに・・・・・・」 彼は上空を警戒飛行する空戦魔導士部隊とバルキリー隊を一瞥する。その時少女の手が彼のローブを弱く摘まんだ。 「・・・・・・さて、お前の探し物に戻るとしよう」 ルーテシアは頷くと、転送魔法を行使。魔力反応を感知したバルキリー隊が駆けつけた時にはすでにもぬけの殻であった。 (*) 「甘いな」 変装したグレイスが呟く。 「やはり子供だ。それほどまでに人を傷つけたくないか」 「なァに、目的が遂行されるなら良心を通してもいいさ」 スカリエッティはそう言うと、先ほど転送されてきた『ガリュー』という人型甲虫から受け取った記録媒体を自らの端末に繋いだ。 立ち上がるウインドウ群。その一番上のタイトルには〝ユダ・システム〟とあった。 「なるほど、有機ネットワーク構造による人工生命か・・・・・・」 彼の顔に徐々に笑みがこぼれてきた。 コンピューターに意識を持たせるという命題には誰一人として成功していない。 しかし例外を言えば製作元でも解析不能なデバイスの基本フレーム、特にインテリジェントデバイスだ。現在その製作技術は戦争で完全に失われており、戦前から稼動していたオートメーション工場にその生産を100%依存している。 だがその意識を持たせる方法が目の前に転がっているのだ。学者として興奮しないはずがなかった。 「どうだ?品物は」 「あぁ、実に素晴らしい。・・・・・・だがこのシステムのプログラムは・・・・・・変だな?この矛盾したサブルーチンはなんだ?これではこのシステムの良いところである自己保存本能が働かない」 実はそこはシャロン・アップルの事件をきっかけにこのシステムに追加されたところだ。 2040年に試作されたゴーストX-9のメインコンピュータはマージ・グルドアの手によって完成を見た。 彼は伝説のバーチャル・アイドル「シャロン・アップル」のシステムエンジニアであり、彼の構築したシステムは仮想空間の中で生物の自我、無意識レベルの感情をもエミュレートする恐るべきものだった。 事実自我を持ったシャロンはマクロスシティにおいて暴走している。理由について統合軍は、機密事項としてそれ(暴走の事実すら)をひた隠しにしているが、彼らも詳しいことは知らないらしい。 ともかく、それでもブラックボックス化したマージの基礎システムはゴーストの中に生き続けていた。なぜなら誰も彼の基礎理論を理解できず、これを分離してしまうとシステムが完全に崩壊してしまうからであった。 そこで封印サブルーチンをL.A.I社が幾重にも掛け、自我を、自己保存本能を完全にオーバーライドしていた。 お陰で最新のゴーストは、ユダ・システムを解放してもまず安心になったのだ。 更によいことに、自らを守ろうとする考えがなければ戦術・戦略及び効果面でしか物を考えないので、彼ら無人機は必要ならば平気でその身を捧げる事ができる。 ユダ・システムを解放したゴーストが、優秀で重要な有人機を守るために、自ら敵弾に当たりに行った例が少なくないのはこのためだ。 ちなみにユダ・システムを自我レベルまで完全解放できるのは、オリジナルを押さえているフロンティアのL.A.I社だけだ。 しかしスカリエッティはプログラムを斜め読みしただけでその機能が封印されていることを言い当ててしまった。これはまさに生身の人間では最高峰の天才と言えた。 「まあ、好きにしろ。こちらとしてはどんなものが完成するのか楽しみだ」 「ご期待に沿えるよう、頑張ってみよう」 彼はほの暗い不気味な笑みを浮かべると、改良のため前時代的なキーボードに手を伸ばした。 グレイスの扮装する男はそれを見届けると、手の内にあったトラックのキーを握り折った。 (*) ホテル内部では予定通りオークションが開始されていた。 しかしその茶髪でドレスを着た美女は会場には入らず、身内からの報告に耳を傾けていた。 『─────という顛末(てんまつ)でガジェットは撃退できたんだけど、召還士は追えませんでした』 『でも近隣の部隊に要請はしましたから、転移座標ぐらいならわかるかも知れないです』 その身内─────シャマルと彼女を手伝うリィンフォースⅡの報告にはやては、六課には負傷者もいないし目立った被害もなく、自らの任務も順調なため良しとした。 『それじゃ、任務を続行するわね』 「ああ、お願いな」 映像通信を切ったはやては、暫し思考の海に浸る。今回の襲撃は不可解な点が多かった。 ガジェット達の襲撃はわずか25分で終わりを告げ、即座に撤退してしまった。 最初の15分はいつも通りだが、後が違った。突然召還士が現れてガジェット達の動きが良くなったかと思えば、まるでこちらを気遣ってくれたかのように非殺傷の攻撃に終始した。 どうやらいままでガジェットを使っていた敵と、今回ガジェットを操った召喚士は別の考えを持っているらしい。 少なくとも召喚士の方は、目的のためなら人殺しもためらわない〝彼〟のような人物とは思えなかった。 (人間がやることには必ず意味がある。これほどの良心がありながら、その召還士がやろうとしたことはなんやろうか?) まずガジェットが主でないのは確かだ。彼らは防衛部隊をかき回しただけで本質的にはなにもしていない。 (となると本命があるはずやけど、まだ何の報告も上がって来て─────) 「主、はやて」 振り返ると、バリアジャケット姿のシグナムがいた。しかし彼女の頬には一筋の切り傷があり、血がにじんでいる。 「なんや?階段でも転げ落ちたんか?」 はやてのジョークに彼女は 「いえ」 と、無愛想に応対する。 (職務に徹するのもいいけど、もうちょい愛想よくしても良いと思うんやけどなぁ・・・・・・) はやては生真面目な身内に、胸の内で場違いな評価を下すと先を促した。 「はい。私は地下駐車場の警備に付いていたのですが、巡回中妙な車上あらしに遭遇しました」 「どんな風に妙なんや?」 「それが人間ではなくて、人型の甲虫のようなフォルムをしていました。残念ながら追いきれませんでしたが・・・・・・」 「そうか・・・・・・」 使い魔や他の次元世界の多様な生態系があるためそのような生物がいること自体は不思議ではない。しかし管理局が遭遇してきた使い魔以外は、生命体であってもほとんどが知性体ではなかった。つまり、牛や魚などと同じだ。 また、生態系の問題から次元世界間の移動はほとんど禁止されていた。 例外として召還魔法により古来から使役され、安全性の確認されている種については召還魔法による呼び出しなど一時的に連れ出すことは認められている。 となると召還士という共通点から今回の事件との関わりがある可能性は高い。 「・・・・・・それで、何を荒らしてったん?」 「はい、密輸品を運んでいたトラックの荷台らしいのですが、何を盗んだのかなど、それ以外は不明です。目下のところトラックの持ち主を捜させています」 「了解や。その生物について管理局のデータベースで調べといて。他にも何か分かったら知らせてな」 「は!」 シグナムは敬礼すると一階に続く階段を降りていった。 (*) その頃なのはとフェイトは会場内で警備に着いていた。 しかしフェイトが合流したのは1分程前からだ。 フェイトは出動しようとシャマル達と合流して準備していたが、敵が本気になってからたった10分で撤退したため出鼻を挫かれていた。 彼女は 「外のガジェットは撤退したから、出動待機は解除。私達は警戒任務に集中してだって」 と、シャマルからの要請をなのはに伝える。 ずっと会場内で警備に着いていたなのははフォワード4人組を含め防衛部隊に目立った被害がないことを聞いて肩をなでおろした。 「あともう1ついいニュース。懐かしい人に会ったよ」 「え?だれ?」 「それは・・・・・・あっ、来たみたい」 フェイトの視線はオークション開催寸前の舞台に向けられている。仕方ないのでなのはも彼女にならった。 『─────ではここで、品物の鑑定と解説を行って戴けます、若き考古学者をご紹介したいと思います』 拍手のなか現れた青年はなのはにとってとても馴染深い人物だった。 そう、彼女を普通の少女からこの世界に引き込んだのは他でもない彼であった。 『ミッドチルダ考古学士会の学士であり、かの無限書庫の司書長、ユーノ・スクライア先生です』 『あ・・・・・・どうも、こんにちは』 彼はマイクの前で少し緊張した様子で挨拶した。 ―――――――――― 次回予告 なのはの過去とさくらの出生秘められたものとは? そしてさくらの願いとは? 次回マクロスなのは第20話「過去」 追憶の歌、銀河に響け! ―――――――――― シレンヤ氏 第20話へ
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第10話「再会は異世界でなの」 「フェイトォッ!!」 エイミィからの連絡を受けたアルフは、すぐさまフェイトの元へと駆けつけた。 幸いにも、彼女が相手をしていたザフィーラは「十分過ぎる成果を得られた」と言い残し、すぐに撤退してくれた。 その為、フェイトが倒されてからあまり間を空けずに到着する事が出来た。 彼女がその場に到着した時、そこに仮面の男の姿は無かった。 あるのは、意識を失ったフェイトとそんな彼女を抱きかかえるシグナム二人の姿だけだった。 「シグナム……!!」 「……テスタロッサの目が覚めたら、伝えておいて欲しい。 言い訳をするつもりは無い……すまなかったとな。 テスタロッサは、リンカーコアを抜かれてから大して時間は経っていない。 すぐに適切な処置をすれば、目も覚ますだろう。」 「え……あんた……」 アルフは、シグナムの言葉を聞いて少しばかりの戸惑いを覚えた。 自分達は敵同士、追う立場と追われる立場なのだ。 今、フェイトは極めて無防備な状態にある。 再起不能になるだけのダメージを負わせるなり、人質として連れ帰るなり、状況を有利に出来る手段は幾らでもある。 だが彼女は、その一切を取らなかった。 一人の騎士として、そんな卑劣な真似をしたくは無かったのか。 互角にまで渡り合えたフェイトに、敬意を払ったのか。 それとも……守護騎士として、主の名を汚したくなかったのか。 どれにせよ、シグナムが正々堂々とした態度を取っているという事実には変わりない。 「……敵同士で、こういう事を言うのもあれだけどさ。 その……ありがとうね、シグナム。」 「……礼には及ばない。」 シグナムはアルフへと、フェイトを手渡した。 そして、直後……彼女は転移呪文を使ってこの世界から姿を消した。 敵でありながらも、シグナムはフェイトの身を案じてくれていた。 アルフは、少しばかり複雑な気持ちではあったものの、その事に感謝していた。 とりあえず、何はともあれフェイトを急いで運ばねばならない。 アルフの術では、ここから時空管理局本局まで飛ぶのは流石に無理な為、エイミィに頼むしかなかった。 すぐさま、エイミィとの連絡を取ろうとするが……その瞬間だった。 突如として、激しい地響きが発生したのだ。 震源は真下……アルフの足元からだった。 「まさか!!」 嫌な予感がしたアルフは、すぐに上空へと飛び上がった。 この世界には人間は一切いないが、その代わりに大型の野生生物が多く存在している。 それが、今まさに現れようとしているのだ。 フェイトを抱えたままでは、対処の仕様が無い……彼女を安全な場所に避難させなければ。 すぐにアルフは術を発動させ、フェイトを先にエイミィの元へと送ろうとする。 「エイミィ、フェイトの事お願い!!」 『うん、もう本局に連絡は取れてるから何とかできるけど……アルフは?』 「流石に、二人一緒にってのは少し時間がかかるからね。 私なら大丈夫だよ、すぐに後から行く。」 『分かった……気をつけてね!!』 「ああ……!!」 フェイトの姿が、その場から消えた。 アルフの術によって、無事にエイミィの元へと転送させられたのだ。 後はエイミィがゲートを繋いで、フェイトを本局へと送ってくれるだろう。 これで、彼女の事は何とか安心できる……後は、自分の問題を片付けるだけである。 地響きが真下から来た事から考えれば、相手の狙いは間違いなく自分。 恐らくは、餌と認識されたのだろう。 「さあ、来るならさっさと来なよ!!」 アルフが構えを取った、その直後。 大量の砂塵を巻き上げながら、その生物は姿を現した。 青い体色の、顎が大きく発達した怪獣。 かつて、ウルトラマンジャックとウルトラマンエースの二人が戦った相手。 そしてメビウスも、その亜種と激闘を繰り広げた敵―――ムルチ。 「ギャオオオォォォォッ!!」 ムルチは口を大きく開き、アルフへと破壊光線を放つ。 アルフはそれを障壁で受け止めると、すばやくムルチの胸元へと移動した。 体格の差は圧倒的ではあるが、逆にそれが味方をしてくれた。 ムルチの巨体では、懐に入ってきたアルフに対処が出来ないのだ。 「ハアアァァァッ!!」 強烈な拳が、ムルチの胴体に叩き込まれた。 鳩尾に一撃……かなり効いている。 そこからアルフは、間髪入れずに拳の連打を浴びせた。 ザフィーラからの連戦だから厳しいかと思ったが、どうやら予想していたよりも大した敵ではなさそうだ。 アルフは少しばかりの余裕を感じた後、ムルチを沈めるべく一気に仕掛けた。 しかし……この時、彼女は思いもしなかっただろう。 もしもミライがいたならば気づけただろうが……本来ムルチは、こんな砂漠にいる筈がないなんて。 ムルチが、『巨大魚怪獣』の呼び名を持つ『水棲怪獣』であるなんて。 一応過去に一度、ムルチは地中からその姿を現したこともあるが……それでも、砂漠という環境は流石に無茶である。 ならば何故、ムルチがここで活動できているのか……その理由は一つしかない。 悪魔の魔の手は……既に、数多くの世界に広がっていたのである。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「ディバインシューター!!」 『Divine Shooter』 「シュート!!」 なのはは5発ほどの魔法弾を生成し、それをレッドキングへと一斉に放った。 しかしレッドキングは、大きく尻尾を振るってその全てを掻き消す……ダメージは皆無。 その後、レッドキングは再び大岩を持ち上げると、なのはへと投げつけてきた。 遠距離にいるなのはに仕掛けるには、これ以外の攻撃手段はレッドキングにはない。 確かに命中すればダメージは大きいだろうが、流石に攻撃が単調すぎる。 なのはには、あっさりと避けられてしまった。 「パワーは凄いけど、距離さえ離しちゃえば……!!」 レッドキングの戦闘スタイルは至って単純。 怪力に任せての、荒々しく凶暴なものである。 接近戦における圧倒的不利は、目に見えている。 しかし距離さえ離してしまえば、攻撃の手段は岩を投げる以外に無い。 両者の戦い方は、完全な対極に位置している。 その事実は、なのはにとっては幸運であり、そしてレッドキングにとっては不幸以外の何物でもなかった。。 流石にレッドキングもこのままでは不利と悟り、一気に距離を詰めにかかった。 だが……レッドキングが取った行動は、走ってくるとかそんなレベルの話ではなかった。 力強く両脚で地面を蹴り、文字通りに『跳んで』きたのだ。 これにはなのはも度肝を抜かれた。 幾らパワーが持ち味とはいえ、あの巨体でここまで跳び上がれるのか。 しかもスピードがある……回避は出来ない。 なのははとっさに、障壁を出現させる……が。 「っ……キャアァッ!!」 レッドキングは、2万トンの体重を持つ超重量級の怪獣。 そのロケット頭突きには、流石に堪え切る事が出来なかった。 なのはは後方へと大きくふっ飛ばされ、派手に地面に激突する。 ヴィータにラケーテン・ハンマーをぶちかまされた時と同じ。 いや、あの時以上かもしれない破壊力があった。 不幸中の幸いだったのは、地面に激突する寸前に、レイジング・ハートが自動的に障壁を展開してくれた事。 その為、何とかダメージは軽減できたのだが…… レッドキングは、ここで追い討ちを仕掛けてきた。 大きく足を上げて、なのはを踏み潰しにかかったのだ。 ロケット頭突き以上に危険すぎる……防御の有無抜きで、命中したら致命傷は免れない。 「ギャオオオォォォン!!」 「レイジングハート!!」 『Flash Move』 とっさに急加速し、間一髪攻撃を避ける。 その直後、相当な量の土煙が吹き上がってなのはの全身を覆い隠す。 あと少し遅れていたら、確実に踏み潰されていただろう。 そのままなのはは、素早くレッドキングから離れようとする。 しかし今度は上空には飛び上がらず、低空飛行で移動している。 これは、先程のロケット頭突きを警戒しての行動だった。 今レッドキングの周囲には、大岩は勿論、投げる事の出来るような物は一切無い。 普通に考えれば、なのはを攻撃する手段は無いように思われるが……先程のロケット頭突きの様な奇襲もありえる。 そう安易に考えてはいけないのは、なのはも重々承知していた。 そしてレッドキングはというと……そんな彼女の考えどおりに、仕掛けてきた。 投げる物が無ければ、作ればいい。 そういう風に考えたのだろうか、あろうことかレッドキングは、地面を怪力で引っぺがしたのだ。 そのまま、なのは目掛けて巨大な土の塊を投函してきたのである。 土は岩に比べれば、かなり脆い。 命中まで形をとどめる事が出来ず、上空で砕け散り、無数の土砂となってなのはへと降り注いできたのだ。 「っ!!」 『Wide Area Protection』 相手が岩ならば打ち砕けたのだが、土砂となるとそうもいかなくなる。 なのははとっさにカートリッジをロードして、広域防御結界を展開した。 その直後、彼女の身に大量の土砂が降りかかった。 あっという間にその全身は土砂の中へと埋まり、姿が隠されてしまう。 土砂は大量、結界も何もなしに埋まったのではまず助からないレベルである。 だが……レッドキングは、それで満足するような怪獣ではなかった。 なのははミライから聞いたときに少しばかり疑問に思ったが、レッドキングは名前に反して『白い』体色をしている。 ならば何故、レッドキングなどという名前が名付けられたか。 それは、この上なく凶暴で『赤い血』を見ることを何よりも好むからである。 レッドキングは、極めて獰猛かつ残忍なのだ。 かつては、自分よりも遥かにか弱い存在であるピグモンを徹底的に甚振り、死に至らしめた事すらもある。 そんなレッドキングが……土砂で覆い潰したぐらいで、満足するわけが無い。 「ギャアオオオオォォン!!」 確実な死を与える為、レッドキングは両手を組んで、地面へとハンマーフックを打ち下ろした。 それも一発ではなく、何度も何度もである。 拳が叩きつけられるごとに、土砂が勢いよく跳ね上がる。 そして、およそ十発程打ち下ろした後。 レッドキングは周囲を見回して、丁度いいサイズの大岩を見つけ出した。 仕掛けるのは、駄目押しの一撃……豪快に持ち上げて、そして地面に叩きつけようとする。 これで、まずなのはは生きてはいまい……そうレッドキングは思っていただろう。 だが……その瞬間だった。 『Divine Buster』 「ッ!?」 地面の下から、レイジング・ハートの声が聞こえてきた。 直後、眩い桜色の光が地面を突き破って出現し……レッドキングの手首に命中した。 レッドキングは思わず大岩を落としてしまい、そしてその大岩がレッドキングの足の指を直撃する。 かつてミライ達も取った、レッドキングにとって最も効果的な攻撃手段の一つである。 『ギャオオオォォォン!!??』 レッドキングは足を抱えて、悲鳴を上げた。 なのはは倒されていないどころか、全くの無傷。 何故なら彼女は今、土砂の下……攻撃の届かない、深い穴の底にいるからだ。 レッドキングが追い討ちに出てくるのは、容易に想像できた。 それをまともに耐え切ろうとするのは、自殺行為に他ならない。 そう判断したなのはは、土砂で姿が隠された瞬間に、地面に穴を空けたのだ。 後は攻撃がやむまで、安全な穴の中に身を隠すだけだった。 上方の土砂は、障壁を展開する事でなだれ込んでくるのを防いでいた。 そして、レッドキングが大岩を拾いにいき攻撃が中断された瞬間。 なのはは契機と見て、仕掛けたのである。 ちなみにディバインバスターを放ったのは、外の様子が分からない現状でも、攻撃範囲が広いこの術ならば当たると踏んだからだ。 「いくよ、レイジングハート!!」 『All right』 レッドキングの悲鳴から察するに、レッドキングは怯んでいる。 またとない攻撃のチャンス……仕留めるのは今。 なのはは一気にカートリッジをロードし、レイジングハートの矛先を斜め上へと向けた。 直後、膨大な魔力が彼女の周囲に収束し始めた。 カートリッジシステムに変更してからは、これが初めてになるなのは最強の魔法攻撃。 「全力……全開!!」 『Starlight Breaker』 「スターライト……ブレイカアァァァァァッ!!」 膨大な量の魔力光が、地面を突き破りその姿を現した。 そしてそのまま、真っ直ぐにレッドキングへと向かい……直撃。 レッドキングは猛烈な勢いで、光と共に上空へと打ち上げられていった。 数秒して、レッドキングは地上20メートル程の高さに到達し……そして。 ドグアアアアァァァァァァン!!! 大爆発。 レッドキングは、見事に打ち倒されたのだった。 なのはは、スターライト・ブレイカーによって吹き抜けになった穴の底から、それを確認する。 無事に打ち倒す事が出来、ほっと一息つく。 そして、彼女が地上へと出た時……ようやくメビウスが、現場へとその姿を現した。 彼は、既にレッドキングが倒されていたのを見て、少しばかり驚いた。 流石というべきだろうか……自分の助けは無用だったみたいだ。 「なのはちゃーん。」 「あ、ミライさん。」 「レッドキング、もうやっつけちゃったんだ……来た意味、あまりなかったみたいだね。」 「にゃはは……じゃあ、早く戻りましょう。 フェイトちゃんの事が心配だし……」 「うん……!?」 帰還しようとした、まさしくその時だった。 これで二度目になる、強烈な地響きが発生した。 揺れはかなり激しい……一度目よりも大きいかもしれない。 流石に立っていられなくなった二人は、上空へと飛び上がる。 そしてその後……同時に、レッドキングが出現した火山へと視線を向ける。 二人とも、とてつもなく嫌な予感がしていた。 まさかと思うが、もう一匹何かが来るんじゃなかろうか。 確かめる為、二人はエイミィに連絡を取ろうとする……が。 「あ、あれ……?」 「念話が、繋がらない……!?」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「レッドキングは倒され、ムルチも圧倒されっぱなしか。 ヴォルケンリッターを相手にした後で、よくやれる……」 広大に広がる砂漠、荒廃した建物の山々。 黒尽くめの男―――ヤプールは、自分以外には何者も存在しないこの異世界から、全てを見ていた。 そう……レッドキングとムルチを仕向けたのは、他ならぬこの悪魔だったのだ。 ヴォルケンリッターや仮面の男の御蔭で、多少なりともなのはとアルフは消耗している。 倒すのならば今がチャンスと感じ、現地に潜ませておいた怪獣を襲い掛からせたのである。 超獣は、怪獣がベースとなって作り出される生物兵器。 怪獣がいなければ、一部の例外的なものを除けば、基本的に作成は不可能なのだ。 そして、より強い怪獣がベースであればあるほど、生み出される超獣も強くなる。 そこでヤプールは、これまで異次元空間内に捕らえてきた多くの怪獣を、近辺の異世界に解き放ったのだ。 野生のままに暴れさせ、成長させる方が、より強くなるだろうと判断した結果である。 その内幾つかの怪獣には、既に軽い改造は施してある……ムルチもその内の一匹。 乾燥した、砂漠のような土地でも動けるよう改造してあったのだ。 無論、狙いはそれだけではない……今回の様になのは達が異世界に現れた際、それを撃退する事も目的である。 しかしながら、レッドキングとムルチは倒されてしまった。 ならば、次の手を打つまで……特になのはとメビウスの二人は、ここで確実に潰す必要がある。 魔力の蒐集が不可能な以上、二人は単なる邪魔者でしかない。 管理局の方に対しては、既に手は打ってある。 仮面の男が、自分達の足跡を下手に辿られない様にと、先程ハッキングを仕掛けておいてくれたのだ。 これは、仮面の男が管理局に通じているからこそ出来た裏技。 御蔭で管理局側からの増援は、当分の間食い止められる……思う存分に叩き潰す事が出来る。 ヤプールは、不適に笑い……新たなる僕を呼び出した。 「行け……ドラゴリー、バードン!!」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「エイミィ……?」 一方その頃。 ムルチと戦っていたアルフも、異変に気がついた。 いつのまにか、エイミィとの連絡が全く取れなくなっている。 あのエイミィに限って、現場から離れるなんてそんな馬鹿な事はありえない筈。 そうなると……考えられるのは、何者かからの妨害行為しかない。 ヴォルケンリッターか仮面の男か、どちらかもしくは両方か、自分達の足跡を辿られない様にしたのだろう。 しかし先程のシグナムの事を考えると、ヴォルケンリッターがこんな真似をするとは考えがたい。 (いや……そうとも言い切れないか。) 一人だけ、そんな真似をしかねない者がいた。 初遭遇の日、なのはに奇襲を仕掛けてリンカーコアを抜き取ったシャマルだ。 考えてみれば、ヴィータ・シグナム・ザフィーラの三人しか異世界には姿を現していない。 ダイナに関しては別として、シャマルは先日の戦いにも、直接の参加はしていない。 完全なバックアップ担当と見ていいだろう。 それに、あまりこういう言い方はしたくないが……一人だけ、正々堂々とは言い切れない。 彼女の性格はよく知らないが、それでも十分にありえる話だ。 勿論、仮面の男が妨害行為をした可能性もある……寧ろ、こちらの方が可能性としては高い。 仮にシャマルがやったのだとしたら、何でそれを今までやらなかったのかという話になるからだ。 だが仮面の男は、先日はベロクロンのゴタゴタに紛れてだったが、今回にはそれがない。 完全な形で姿を見せたのは、これが初……ならば、彼等であるのはほぼ間違いないだろう。 タイミング的にも、十分合う。 「どっちにせよ、こいつをぶっ倒してさっさと戻ればいい話さ。 とっとと決めに……!?」 とどめの一撃を叩き込もうとした、その瞬間だった。 何処からか、「ミシリ」と何かに亀裂が走るような音が聞こえてきた。 アルフはとっさに、その音源……上空を見上げた。 見渡す限り砂漠のこの世界に、そんな物音を立てられそうな代物なんて一つもない。 ただ一つ……昨日も目にした、空を除けば。 「まさか、嘘……!?」 ガッシャアアアァァァァァン!!!! 空が割れ、その超獣は姿を現した。 地球上に生息している蛾と、宇宙怪獣とを組み合わせて誕生した超獣。 かつて、エースとメビウスを苦しめた蛾超獣ドラゴリー。 ドラゴリーは着地すると、早速アルフへと攻撃を仕掛けてきた。 唸りを上げ、両腕を振り回す。 アルフはとっさに急加速し、その一撃を逃れる。 しかしその背後には、大口を開けて待ち構えていたムルチがいた。 「ギャオオオォォン!!」 「くっ……!!」 ムルチは口を開き、破壊光線を放つ。 アルフはとっさに障壁を展開し、その一撃を受け止める。 するとここで、今度はドラゴリーが背後から仕掛けにきた。 両の眼球から光線を放ち、アルフを焼き殺そうとする。 挟み撃ち……両方の攻撃を防御しきる自信はない。 ならばと、アルフは障壁を維持したまま上空へと急上昇した。 それにより、ムルチとドラゴリー両者の攻撃は、それぞれ正面にいる相手に命中してしまう。 見事、同士討ちをしてくれたのだ。 「ギャアアァァァ!?」 「グオオオォォォン!!」 「やった……あんまり、頭はよくないみたいだね。 それにしても、どうして……!!」 何故、ヤプールの超獣がこんな異世界に現れたのか。 先日の襲撃の件も考えると、やはり狙いは自分達ということになる。 メビウスに味方する者を全滅させるつもりなのは、まず間違いない。 ヤプールが闇の書を狙っているというのなら、尚更になる。 ここで自分が倒れれば、ヤプールは簡単に魔力を手に入れることが出来るからだ。 後は何らかの形で仮面の男同様にヴォルケンリッターに接触し、それを渡せばいい。 「全く、面倒なことしてくれちゃって……!?」 ここでアルフは、言葉を失った。 その眼下では、ドラゴリーとムルチが争いあっている。 同士討ちを狙った以上、それ自体はありがたいことなのだが…… 正直言うと、これは争いとは呼びがたい。 そう、それは……一方的な虐殺だった。 両者の戦闘能力の差は、圧倒的過ぎた。 ドラゴリーはムルチを、徹底的に甚振っていたのだ。 ムルチはドラゴリーに馬乗りにされ、滅多打ちにされている。 必死になって抜け出そうと、ムルチはもがいている。 だがドラゴリーは、無情にもそんなムルチの左腕と肩を掴み……その怪力で、一気に左腕をもぎ取った 鮮血を噴出しながら、ムルチがもがき苦しむ。 しかしそれでも、まだドラゴリーの攻撃は終わらない。 今度は右腕と肩を掴み、そして勢いよく右腕をもぎ取った。 ドラゴリーは、ムルチを徹底的に八つ裂きにしようとしているのだ。 ムルチが悲痛な叫び声を上げる。 それが癪に触ったのだろうか、ドラゴリーはムルチの嘴を掴んだ。 そして……両手で一気に開き上げ、そのまま顔面を真っ二つにしたのだ。 ムルチの泣き声が止む……絶命したのだ。 「っ!!」 あまりの酷さに、つい動きを止めてしまっていたが……そんな場合じゃない。 寧ろ、敵の注意がそれている今は最大の攻撃のチャンスである。 アルフはすぐに飛び出し、全速力でドラゴリーへと向かった。 魔力を乗せた拳を、その後頭部へと全力で叩き込む。 流石にドラゴリーも、この奇襲には反応できなかった。 少しよろけ、地面に倒れそうになる……が。 「キシャアアァァァァッ!!」 そう簡単には、倒れてはくれない。 ドラゴリーは踏ん張ると、振り向き、その鋭い目でアルフを睨みつけた。 強い殺意に満ちているのが、一目で分かる。 この超獣は、ムルチよりも遥かに危険。 即座にその事実を、アルフは理解する事が出来た。 「……どうやら、最初に来た奴ほど甘くはないみたいだね……!!」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「どうして、連絡が……」 「なのはちゃん、くる!!」 「あ、はい!!」 同時刻。 なのはとメビウスの前にも、ヤプールから送り込まれた刺客が現れた。 レッドキングが出現したのと同じ、火山の麓。 そこから唸りを上げ、その怪獣は現れた。 その姿を見て、メビウスは思わず声を上げてしまった。 現れたのは、ウルトラ兄弟最強と詠われた二大戦士、タロウとゾフィーを一度は葬り去った大怪獣。 メビウス自身も、かつて深手を負わされてしまった、最大の強敵が一匹―――火山怪鳥バードン。 レッドキングとは……格が違いすぎる。 「そんな……!! レッドキングの次は、バードン!?」 「キュオオオォォン!!」 バードンは高らかに泣き声を上げると、その場で強く羽ばたいた。 強烈な突風が巻き起こり、周囲の木々が次々に吹き飛ばされていく。 バードンの羽ばたきは、民家を一つ破壊する程の威力がある。 なのはとメビウスは、とっさに防御を固めるが……踏ん張りきれない。 「セヤァァッ!?」 「キャアァァァッ!!」 二人は突風に煽られ、後方へと吹き飛ばされてしまった。 特に、バードンとのサイズの差があるなのはの方は、100m以上吹き飛ばされてしまっている。 そうなると、攻撃対象が近くにいるメビウスの方となるのは必然。 バードンは大きく翼を広げ、メビウス目掛けて飛びながら迫ってきた。 その巨体からは想像がつかないほどの、とてつもない速さ。 とっさにメビウスはメビウスディフェンスサークルを展開して、バードンの嘴を受け止める。 嘴による一撃だけは、絶対に受けてはならない。 その恐ろしさがどれ程のものか、メビウスは身をもって味わった経験があった。 メビウスはすぐに間合いを離して、光弾をバードンへと放つ。 しかしバードンは、それを翼で弾き飛ばした。 そしてそのままの勢いで、メビウスに翼を叩きつける。 「グゥッ!?」 「キュオオオォォン!!」 「ミライさん!! レイジングハート、カートリッジロー……!?」 『Master!?』 「なのはちゃん……!?」 まともに胴体に打ち込まれ、メビウスが怯む。 それを見たなのはは、すぐさま助けに入ろうと、カートリッジをロードしようとした。 だが、その瞬間……異常は起きた。 なのはが胸元を押さえ、急に苦しみ始めたのだ。 顔色は悪く、汗も酷く流れ出ている……全身の震えも止まらない。 レイジングハートは、一体彼女に何が起こったのか、まるで分からなかったが……数秒して、事態を把握した。 よく見てみると、バードンの周囲の木々が枯れはじめているのだ。 『まさか……この生物は……!?』 「なのはちゃん、急いで地球に戻って!! バードンは、体内に猛毒を持ってる……このままじゃ危険だ!!」 「毒……!?」 バードンはその体内に、強力な毒素を持っている。 それが先程の羽ばたきによって、微量ながらも散布されてしまっていた。 なのはは運悪く、それを吸い込んでしまっていたのだ。 メビウスが嘴による攻撃を恐れていたのも、ここにあった。 万が一、刺されてしまった場合……直接毒素を注入されてしまうからだ。 このままでは命に関わりかねないと、すぐに撤退するようメビウスはなのはに促した。 彼女をこのまま戦わせるのは危険すぎる……バードンは、自分一人で倒さなければならない。 幸い、メビウスは空気中の毒素の影響は受けてはいない。 戦うことは十分可能……すぐに向き直り、構えを取る。 「セヤァッ!!」 「キュオオオォォン!!」 メビウスはバードンの胴体へと、蹴りを打ち込む。 バードンは少しばかり怯むも、すぐに持ち直して反撃に移った。 怒涛の勢いで繰り出される、翼による殴打の連打。 メビウスは防御を固め、反撃の隙をうかがった。 そして、その時はすぐに来た。 バードンが大きく振り被って、翼を打ち下ろしにかかる。 その一瞬の隙を狙い、メビウスは前転。 バードンの背後に回り込んで、一気に仕掛けにかかった。 「セヤァァァァッ!!」 メビウスブレスのエネルギーを開放し、拳に纏わせる。 必殺の拳―――ライトニングカウンター・ゼロ。 メビウスは勢いよく、全力でその一撃を背後から叩き込んだ。 直撃を受けたバードンは、呻き声を上げて地面に倒れ…… 「キュオオオン!!」 こまない。 とっさに地面へと両手をつけ、ギリギリのところで踏ん張っていたのだ。 その後、地面を蹴ってそのまま跳躍。 メビウスとは逆方向―――なのはのいる方へと、接近していったのだ。 肝心のなのはは、魔方陣を展開して撤退寸前だった。 しかし……この強襲を前にして、それを中断せざるを得なくなる。 とっさに、バードンを迎撃しようとするが…… 「っ……!!」 視界が霞んで、狙いが定まらない。 毒の影響が、予想以上に響いていたのだ。 ならば先程レッドキングに仕掛けた時のように、ディバインバスターでいくのみである。 なのはは気力を振り絞り、魔力を収束させる。 「ディバイン……バスタアアァァァァッ!!」 魔法光が放たれ、真っ直ぐにバードンへと向かう。 だが……その威力が、先程に比べて弱い。 毒による消耗のせいで、完全に力を出し切る事が出来なかったのだ。 バードンは迫り来る光に対し、口を開き高温の火炎を吐き出した。 ディバインバスターが、相殺されてしまう。 そのままバードンは、なのはへと接近……嘴を突きたてようとした。 なのはは、とっさに目を閉じてしまう。 しかし……その瞬間だった。 「グッ……!?」 「!! ミライさん!!」 なのはをかばって、メビウスがその一撃を受けてしまっていた。 深々と、バードンの嘴が肩に突き刺さってしまっていたのだ。 メビウスはすぐにバードンへと拳を打ち込み引き離すも、その場に膝をついてしまう。 これで彼の体内にも、毒が回ってしまった。 胸のカラータイマーが赤色へと変化し、音を立てて点滅し始める。 バードンはその様を見ると、高らかに鳴き声を上げる。 それはまるで、己の勝ちを確信し、嘲笑うかのようであった。 そして、トドメを刺すべくバードンが動く。 大きく口を開き、二人目掛けて火炎を噴出した。 (まずい、このままじゃ……!!) せめて……なのはちゃんだけでも……!!) 障壁の展開は間に合わない。 自分の体を盾にして、炎からなのはを守るしかない。 重傷を負うのは確実……最悪死ぬかもしれないだろうが、それ以外に方法は無かった。 メビウスは、迫り来る炎を前にして覚悟を決めた。 なのははそんなメビウスを見て、力を出し切れなかった己を呪った。 何とかして、メビウスを―――ミライを助けたい。 なのはとメビウスと。 二人が、互いを思い強く願った……その時だった。 祈りは通じた―――奇跡は起こった。 ドゴォォォンッ!! 「えっ!?」 上空から、二人とバードンとの間に赤く輝く光の玉が落ちてきた。 その玉が丁度、火炎から二人を守る盾の役割を果す。 なのははこの予想外の自体を前に、ただ驚くしかなかった。 しかし……メビウスは違った。 彼は、この光の玉に見覚えがあった。 やがて光は消え、玉の中から何者かが姿を現した。 メビウスと同じ大きさをした、銀色の巨人。 その胸に輝くは、六対の球体―――スターマーク。 そしてその中央には、蒼く輝くカラータイマー。 「兄さん……ゾフィー兄さん!!」 「ようやく会えたな……メビウス。」 ウルトラ兄弟を束ねる長兄―――ゾフィー。 予想していなかった、しかしこの上なく心強い増援を前にして、メビウスは思わず声を上げた。 ゾフィーはそのままバードンに蹴りかかり、その巨体を吹っ飛ばす。 その後、大きく首を振るい、己の頭で燃え盛っていた炎を消す。 どうやら先程火炎を受けた影響により、燃えてしまっていたらしい。 ゾフィーはなのはとメビウスへと振り向くと、掌をカラータイマーへと一度乗せた後、二人に向けた。 そこから、エメラルド色に輝く光が二人へと放たれる。 「あ……体が、楽に……!!」 なのはは、己の体が軽くなるのを感じた……毒が抜けたのだ。 それはメビウスも同様であり、そのカラータイマーは青色に回復している。 ゾフィーが、己のエネルギーを二人へと分け与えたのだ。 二人は立ち直り、そして構えを取った。 「メビウス、そして地球の者よ。 ここまで、よく頑張ったな……もう一息だ。 力を合わせて、バードンを倒すぞ!!」 「はい!!」 圧倒的不利かと思われていた形勢は、一気に逆転した。 ウルトラマンメビウス、高町なのは、ゾフィー。 今……三人の、反撃の狼煙が上がる。 戻る 目次へ 次へ
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誕生、Hカイザー/神と聖王 ◆gFOqjEuBs6 ホテルの外は、未だに漆黒の闇に包まれていた。 だけど、物陰に潜む八神はやてに危害は及んでいない。 輝く雷は一片たりともはやてには届いていない。 雷鳴もまた、遠くで鳴り響いているのみであった。 「頼むでヴィヴィオ……もう少し持ち堪えてや」 祈る様に呟く。 鬼神たるエネルに今現在立ち向かっているのは、同じく鬼神たる存在。 とうに優しさを枯らしてしまった、最強最悪の魔道師。 それは、古代ベルカにおける聖王(ザンクトカイザー)の姿を取り戻した者。 純粋な戦闘力だけで考えれば、なのはですらも勝てるかどうか解らない程の猛者。 聖王・ヴィヴィオ。それがエネルと戦闘を繰り広げている少女の名前だった。 さて、はやてがここで待って居るのには、理由がある。 周囲の電気を吸収したエネルが現れた時には、万事休すかと思った。 冷静に考えて、明らかに勝てる訳が無いのだ。 魔力もまともに残って居ない自分と、あんな優男(金居)一人では戦力が乏しすぎる。 仮面ライダー二人までなら相手に出来ると豪語しながらも、金居はエネルとの戦闘を避けた。 その辺りからも金居はエネルに敵わないのだという事は容易に想像できた。 ならばどうする。スバルは味方に引き入れたいが、乱戦中。 かと言ってホテルの外にはエネルが待ち受けている。 このままスバルの戦いが終わるのを待っている内にエネルに殺されてしまえば話にならない。 そんな時、現れたのが聖王ヴィヴィオであった。 現れたヴィヴィオは、何の迷いもなくエネルとの戦闘を開始した。 当初はヴィヴィオでも勝てないのではないかと思ったが、それは大きな見当違いだ。 今のヴィヴィオの戦闘能力は、どういう訳かエネルにも匹敵するポテンシャルを引き出していた。 それどころか、傍から見ればヴィヴィオの方が有利なのではないかと思える程であった。 またコンシデレーションコンソールで狂わされたのか、誰かの死を切欠に壊れたのかは知らないが……。 一方で、ヴィータとはヴィヴィオを守るとの約束した覚えもある。 だけど、今がそんな事を言っている場合ではないのは明らかだ。 まず第一に、助けが必要なのであればあんな化け物と戦わないで欲しい。 第二に、現状では確実にヴィヴィオの方が自分たちよりも強いのだ。 最早自分が態々守ってやる必要もないだろう。 ともすれば、これは大きなチャンスと鳴り得る。 ヴィヴィオが時間を稼いでくれるし、上手くいけばヴィヴィオがエネルを倒してくれるかもしれない。 と、そんな状況下で、金居はすぐに次の作戦を立案した。 金居の目的はスバル達と戦っている黒いライダーだけだという。 他の奴と戦うつもりはないし、黒のライダーが居る以上、スバル達にも興味は無い。 故に、ヴィヴィオがエネルを引き付けてくれている間に、金居がホテルに潜入。 機を見計らって、黒いライダーに戦闘を吹っ掛ける。 その際スバル達には、「外ではやてが待っている」などと伝えて貰う。 そしてこの場での戦闘は金居に任せて、スバル達には先に離脱を促す。 簡単な作戦だが、この状況ではこれが最善の策だと思えた。 そして数分後、ホテルから出て来たのは、一人の少女を背負った男であった。 まるで箒のような、黒髪トンガリ頭にサングラス。赤いコートを靡かせて、男は走る。 何者かと目を細めるはやてに、先に声を掛けて来たのは男の方であった。 「やぁ、あんたが八神はやてかい!?」 「え……えぇ、そうですけど……」 男はとても悪人とは思えない、ともすれば馬鹿とも思えるような口調だった。 ◆ 時は数分前に遡る。 ヴァッシュを殺す為に、参加者を皆殺しにする為に。 それだけを目的にホテルの目前までやってきたエネルは、一人の少女と出会った。 全身を漆黒で塗り固めた、金髪の少女。緑と赤のオッドアイには、気味が悪い程の虚が宿っていた。 闇に溶けるその姿は、まるで周囲を凍てつかせるような気迫を放って居た。 そんな第一印象を抱いた後に、エネルは自分の考えを否定した。 神たる自分が、こんな小娘一人に何を考えているのだ。 一撃で殺して、終わりにしてやればいいだけの話ではないか。 そう判断して、エネルは片腕を挙げた。 同時に、エネルの腕は雷と化し、天を埋め尽くす雷雲へと昇って行く。 それから間もなく、空全体がぴかりと光って――計り知れない威力を秘めた雷が、少女へと降り注いだ。 ごろごろ、ごろごろと。周囲の電気を自分の電気を合わせた一撃は、生半可な威力では無い。 アスファルトを焼いて拡散した電力は、再び自分の身体へと舞い戻る。 無限ループの雷地獄。あんな小娘一人が耐えきれる訳が無い。 そう思っていた。 「ほう……?」 雷が止んだ後、小娘はそこに変わらず立ち尽くしていた。 エネルが殺そうとした相手・聖王ヴィヴィオは、聖王の鎧という先天固有技能を持っている。 それはあらゆる障害から聖王を守る、強固な盾となりて、雷からヴィヴィオを救った。 エネルは知らない。ヴィヴィオの命を削るレリックが、同時にヴィヴィオを強くする事を。 身体に深刻なダメージを与える一方で、ヴィヴィオの命の炎を燃やし尽くさんと稼働している事を。 「まずはお前から殺してやる……!」 ヴィヴィオが、憎悪を吐き出すように絶叫した。 瞳には僅かな涙を浮かべて、その表情を醜く歪ませて。 虹色の魔力光を宿した鬼神・ヴィヴィオの命はもう、長くは持たない。 消えゆく命の輝き。その恐ろしさを、出会った参加者全てに刻みつける。 そして、愛する者を傷つけた全ての参加者を血祭りにあげてやる。 例え死んでも構わない。例え地獄に落ちても構わない。 それだけの決意が、ヴィヴィオを動かしているのだ。 「神に対して、何たる不遜。ならば教えてやるぞ小娘よ……神の恐怖を!」 今度は、エネルが腕を突き出した。 刹那の内に、エネルの腕が極太の雷へと変化した。 それは周囲全ての電力を吸収し、瞬く間に膨れ上がる。 放たれたのは、アスファルトを抉る程の威力を秘めた電撃。 神の裁き――エル・トール。 「ハァァァァァァァァァァァァァッ!!」 ヴィヴィオから吐き出される、咆哮。 放たれるは、眩い閃光。ヴィヴィオの命の輝きを体現したような虹色の輝き。 それらが同じく、極太の奔流となってエネルの雷を打ち消したのだ。 これには流石のエネルも驚かずには居られない。 何たることかと、大口を開けるエネルに対し、先に行動したのはヴィヴィオ。 「ママ……ママ……ママ……ママ……!」 狂ったような笑み。狂ったように叫ぶ、愛しい人の名前。 アスファルトを蹴って、ヴィヴィオがエネルへと一直線に走る。 それを阻止せんと、周囲の雷雲が無数の電撃を放電するが……。 「解ったよ……ママ!」 右へ跳び、左へ跳び、上空へ跳び上がり、回転する。 見事なステップ、見事な動きで、エネルの攻撃を全て回避。 いくつか小さな攻撃が命中するが、そんなものは聖王の鎧の前には無意味だ。 虹色の輝きが電撃を弾き、ヴィヴィオの前進を手助けする。 「ママが……私を守ってくれてる! 私を見てくれてる!」 口元を大きく歪め、狂った笑いを作り出す。 なのはママの気配を感じる。フェイトママの気配を感じる。 それだけじゃない。ザフィーラや、死んでいった他の人間。 それら皆が、ヴィヴィオのすぐ傍に付いてくれている。 だからヴィヴィオは、何も恐れはしない。 「ずっと……ずっと……一緒に居てくれたんだね……なのはママ!!」 「消え去るがいい……!!」 愛する者の名を絶叫しながら、エネルの眼前まで迫る。 今度はエネルが両手を掲げ、その電力を放出する。 エネルの電撃の前には、何も残らない。アスファルトも、周囲の建物も。 全てを焼き尽くす神の閃光が、至近距離でヴィヴィオへと放たれる。 「うぁぁぁぁあああああああああああああああああああッ!!」 「ひぃ……ッ!?」 だけど、ヴィヴィオは止まらない。 今度の雷は、確かに聖王の鎧を貫いた。 ヴィヴィオの漆黒の騎士甲冑を焼き、インナーを露出させる。 全身にダメージを負いながらも、ヴィヴィオの猛攻は止まらない。 これが、死さえも恐れぬ聖王の力。エネルには絶対に不可能な芸当。 例え自分が死に、地獄に落ちる事さえ厭わない究極の聖王の姿。 虹色の魔力を拳に宿らせて、ただ力任せに振り抜いた。 「地獄聖王(ヘルカイザー)を、ナメるなぁぁぁぁぁッ!!」 「わぶ……っ!?」 最早自分は、聖王(ザンクトカイザー)などでは無い。 ザンクトカイザーをも超えた、最強にして究極の闇。 神すらも、地獄すらも恐怖の対象には鳴り得ない。 その想いをぶつける様に、振り抜いた拳をエネルの顔面に叩き込んだ。 情けない声を上げながら、エネルの身体が後方へと吹っ飛んで行く。 何度も何度も硬いアスファルトに身体をぶつけながら、エネルの身体が醜く舞う。 「第二打ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」 「ひぃいいいいいいいいいいいいいい!?」 逃がしはしない。すぐにエネルに追い付いたヴィヴィオが、その脚を振り上げた。 虹色の魔力光を宿した一撃が、エネルの腹を両断せんと振り抜かれる。 咄嗟に雷によるバリアを張るが、そんなものは気休めだ。 ヴィヴィオの威力を殺すには至らず、エネルの身体が遥か上空へと舞う。 だけど、まだヴィヴィオの気は済まない。こんなものでは、ママの無念は晴らせない。 半ば八つ当たりにも近い想いで、ヴィヴィオは飛び上がった。 「第三打……第四打ッ!!」 「ぐ……ぅ……!」 一撃目は、跳びひざ蹴り。 空中で受身など取れる訳もないエネルの腹部に、その膝を叩き込んだ。 その口から夥しい量の鮮血を吐血し、エネルが白眼を剥いた。だけど、まだ終わらない。 両手の指を硬く絡ませて作り出したハンマーを、矢継ぎ早にエネルの背中目掛けて振り下ろした。 比較的筋肉の多い背中で受ける分、まだダメージは少ないが、それでも今のエネルには十分過ぎる一撃。 エネルの身体が、真下のアスファルトに向かって加速。 どごぉん! と、馬鹿でかい破砕音と共に、エネルの身体がアスファルトを抉った。 これで殺してやる。 「五連打ァァッ!!」 アスファルトへと着地するよりも先に、ヴィヴィオが両手を突き出した。 眩く輝く輝きは、聖王だけに許された最高純度の魔力光。 それらを解き放つように、エネルに向かって発射――する、筈だった。 「う……ぐ、ッ!」 ヴィヴィオの動きが止まった。 吐血だ。エネルにも負けず劣らず、明らかに命に関わる量の鮮血。 同時に、ヴィヴィオの胸を襲う激痛。心臓が鼓動する度に、痛みが募る。 咄嗟に心臓を抑えた事で、空中で体勢を崩してしまった、その刹那。 「この……不届き者がぁぁぁぁああああああああああああああッ!!!」 「な……ぐ、あぁぁあああああああああああああああ!?」 遥か頭上の天空から。エネルのいる真下から。周囲の雷雲から。 ほぼ360度から、目を眩ます程の輝きがヴィヴィオを襲った。 それらは体調を崩した今のヴィヴィオが受け切るには、あまりに協力過ぎる。 聖王の鎧である程度はダメージを軽減できても、それがヴィヴィオにとって大きな一撃となる事は間違い無かった。 閃光が晴れた後に、どさりと音が鳴る。 ヴィヴィオの身体が、アスファルトへと落下した音だ。 あれだけの一撃を受けたのだ。最早五体を動かす事すらもままならないだろう。 ……否、緑と赤のオッドアイはまだ見開かれていた。 憎々しげにエネルを睨むその表情に、確かな憎悪が込められていた。 「ほう……まだ戦えるか。いいだろう、ヴァッシュより先に、貴様から裁いてくれる」 赤い剣をその手に構え、エネルがヴィヴィオに視線を送る。 対するヴィヴィオも、まだ戦意を失ってはいない。まだ輝きを消してはいない。 その眼は未だにギラギラと光り輝いているし、滲みだす戦意だって生半可ではない。 痛む身体に鞭を打って、もう一度二本の足で立ち上がった。 「お前なんかに負けてられない……ママが、見てるのに……!!」 現実も、五感も、思考も、遠のいていく。 ただ沸き上がる憎悪と怒りに身を任せるままに、ヴィヴィオは再び拳を構える。 心臓の痛みは、もう引いている。 今は只、全身が心臓になったように鼓動を鳴らしているだけだった。 【1日目 夜中】 【現在地 F-8 東側(ホテル付近)】 【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】究極聖王モード、血塗れ、洗脳による怒り極大、肉体内部に吐血する程のダメージ(現在進行形で蓄積中) 【装備】レリック(刻印ナンバー不明/融合中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning 【道具】支給品一式、フェルの衣装、クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レークイヴェムゼンゼ@なのは×終わクロ、ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【思考】 基本:なのはママとフェイトママの敵を皆殺しにする、その為に自分がどうなっても構わない。 1.エネルを殺して先に進む。 2.天道総司を倒してなのはママを助ける。 3.なのはママとフェイトママを殺した人は優先的に殺す。 4.頃合を見て、再びゆりかごを動かすために戻ってくる。 5.ヴィヴィオにはママがずっとついてくれている。 【備考】 ※浅倉威は矢車想(名前は知らない)から自分を守ったヒーローだと思っています。 ※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。キングは天道総司を助ける善人だと考えています。 ※ゼロはルルーシュではなく天道だと考えています。 ※ヴィヴィオに適合しないレリックが融合しています。 その影響により、現在進行形で肉体内部にダメージが徐々に蓄積されており、このまま戦い続ければ命に関わります。 また、他にも弊害があるかも知れません。他の弊害の有無・内容は後続の書き手さんにお任せします。 ※副作用の一つとして、過剰なまでに戦闘力が強化されています。しかし、力を使えば使う程ダメージは大きくなります。 ※レークイヴェムゼンゼの効果について、最初からなのは達の魂が近くに居たのだと考えています。 【エネル@小話メドレー】 【状態】ダメージ・疲労(極大)、激怒、『死』に対する恐怖 【装備】ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使 【道具】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ランダム支給品0~2 【思考】 基本:主催含めて皆殺し。この世界を支配する。 1.神の威厳を守るため、ヴィヴィオを殺す。 2.ヴァッシュに復讐する。 2.ヴィヴィオに対する恐怖。 【備考】 ※黒い鎧の戦士(=相川始)、はやてと女2人(=シャマルとクアットロ)を殺したと思っています。 ※なのは(StS)の事はうろ覚えです。 ※なのは、フェイト、はやてがそれぞれ2人ずついる事に気付いていません。 ※背中の太鼓を2つ失い、雷龍(ジャムブウル)を使えなくなりました。 ※市街地と周囲の電力を取り込み、常時雷神(アマル)状態に近い放電状態になりました。 ※吸収した電力で、僅かな傷や疲労は回復しています。 森林の中を駆け抜ける影が二つ。 一つは、紫髪の少女を背負った赤コート。ヴァッシュ・ザ・スタンピード。 一つは、管理局の制服に身を包んだ若き部隊長。八神はやて。 少女を一人背負う事で、ヴァッシュの走る速度は著しく低下していた。 だけど、魔法を抜けば一般人と変わり無いはやての速度に合わせるという意味では、それくらいが調度良かった。 二人が目指す先は同じ。このマップ上に示された、スカリエッティのアジトだ。 そこにスバルが言う仲間がいる。 では、その仲間とは一体全体誰の事であろうか。 生き残っている参加者から考えると、高町なのは辺りであろうか? もしもそうであれば、これ以上心強い物はない。が、必ずしもそうとは限らない。 アジトに居るのがなのはなら、仲間などという間接的な表現を取る必要は無い筈だ。 ストレートに「なのはさんがそこに居る」と言えば伝わるのだから。 それらを踏まえて考えると、アジトに居るのははやても知らない第三者である可能性が高い。 「で、その子はどうするんですか?」 「スバルの仲間と会わせなきゃならない。俺はそうスバルと約束したから」 「わからへん……そんな危険人物を合わせる事に、意味があるんですか?」 「ああ、きっとね。スバルは無駄なお願いはしない……と思う」 走りながら、はやては大きなため息を吐いた。 何度か言葉を交わして解った。こいつもスバル同様御人好しタイプだ。 態々「その子を仲間に会わせろ」と言うからには、何らかの策はあるのだろう。 スバルの事だ、危険人物を改心させたいとか、大方そんな所だろう。 だが、だとしたらそれは少々楽観視し過ぎではないだろうか? 話を聞く限りでは、かがみという人間は相当な危険人物らしいが……。 そんな不安を抱えたまま、はやて達は走り続けるのであった。 【1日目 夜中】 【現在地 D-9 森林】 【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@リリカルTRIGUNA s】 【状態】疲労(大)、融合、黒髪化九割 【装備】ダンテの赤コート@魔法少女リリカルなのはStylish、アイボリー(5/10)@Devil never strikers 【道具】なし 【思考】 基本:殺し合いを止める。誰も殺さないし殺させない。 1.スバルを信じて、スカリエッティのアジトへ向かう。 2.柊かがみから戦力を奪った上で、スバルの仲間(=泉こなた)に会わせる。 3.こなたに出会ったら、スバルからの伝言を伝える。 4.首輪の解除方法を探す。 5.アーカード、ティアナを警戒。 6.アンジールと再び出会ったら……。 7.千年リングには警戒する。 【備考】 ※制限に気付いていません。 ※なのは達が別世界から連れて来られている事を知りません。 ※ティアナの事を吸血鬼だと思っています。 ※ナイブズの記憶を把握しました。またジュライの記憶も取り戻しました。 ※エリアの端と端が繋がっている事に気が付いていません。 ※暴走現象は止まりました。 ※防衛尖翼を習得しました。 【八神はやて(StS)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】 【状態】疲労(中)、魔力消費(大)、肋骨数本骨折、内臓にダメージ(小)、複雑な感情、スマートブレイン社への興味 【装備】憑神刀(マハ)@.hack//Lightning、夜天の書@魔法少女リリカルなのはStrikerS、 ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは、ヘルメスドライブ(破損自己修復中で使用不可/核鉄状態)@なのは×錬金、 【道具】支給品一式×3、コルト・ガバメント(5/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、 トライアクセラー@仮面ライダークウガA’s ~おかえり~、S W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、 デジヴァイスic@デジモン・ザ・リリカルS&F、アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、 ゼストの槍@魔法少女リリカルなのはStrikerS、虚空ノ双牙@魔法少女リリカルなのはsts//音が聞こえる 首輪(セフィロス)、デイパック(ヴィータ、セフィロス) 【思考】 基本:プレシアの持っている技術を手に入れる。 1.スカリエッティのアジトへ向かう。 2.柊かがみは本当に大丈夫なのか……? 3.手に入れた駒は切り捨てるまでは二度と手放さない。 4.キング、クアットロの危険性を伝え彼等を排除する。自分が再会したならば確実に殺す。 5.以上の道のりを邪魔する者は排除する。 6.メールの返信をそろそろ確かめたいが…… 7.自分の世界のリインがいるなら彼女を探したい……が、正直この場にいない方が良い。 9.ヴィータの遺言に従い、ヴィヴィオを保護する? 10.金居の事は警戒しておく。怪しい動きさえ見せなければ味方として利用したい。 【備考】 ※プレシアの持つ技術が時間と平行世界に干渉できるものだと考えています。 ※ヴィータ達守護騎士に心の底から優しくするのは自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています。 ※キングはプレシアから殺し合いを促進させる役割を与えられていると考えています(同時に携帯にも何かあると思っています)。 ※自分の知り合いの殆どは違う世界から呼び出されていると考えています。 ※放送でのアリサ復活は嘘だと判断しました(現状プレシアに蘇生させる力はないと考えています)。 ※エネルは海楼石を恐れていると思っています。 ※放送の御褒美に釣られて殺し合いに乗った参加者を説得するつもりは全くありません。 ※この殺し合いにはタイムリミットが存在し恐らく48時間程度だと考えています(もっと短い可能性も考えている)。 ※「皆の知る別の世界の八神はやてなら」を行動基準にするつもりです。 【アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS】の簡易状態表。 【思考】 基本:ゼストに恥じない行動を取る 1.………… 2.はやて(StS)らと共に殺し合いを打開する 3.金居を警戒 【備考】 ※参加者が異なる時間軸や世界から来ている事を把握しています。 ※デイパックの中から観察していたのでヴィータと遭遇する前のセフィロスをある程度知っています。 【柊かがみ@なの☆すた】 【状態】気絶、疲労(極大)、つかさの死への悲しみ、サイドポニー、自分以外の生物に対する激しい憎悪、やさぐれ 【装備】千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです、ストラーダ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ホテルの従業員の制服 【道具】無し 【思考】 基本:みんな死ねばいいのに……。 1.………………。 2.他の参加者を皆殺しにして最後に自殺する。 【備考】 ※一部の参加者やそれに関する知識が消されています(たびかさなる心身に対するショックで思い出す可能性があります)。 ※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。 ※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。 ※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。 ※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間~1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。 ※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。 ※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。 【思考】 基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で相棒の世界へ帰還する。 1.そろそろ宿主サマを変えたい 2.キャロが自分の世界のキャロなのか確かめたい。 3.こなたに興味。 4.メビウス(ヒビノ・ミライ)は万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。 5.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……。 【備考】 ※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません(少なくとも2時間以上必要である事は把握)。 ※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました(もしも自分の知らないキャロなら殺す事に躊躇いはありません)。 ※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。 ※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません(別に訂正する気はないようです)。 Back 誕生、Hカイザー/NEXT BATTLE 時系列順で読む Next Yな戦慄/烈火剣精は見た! 投下順で読む Next Yな戦慄/烈火剣精は見た! ヴァッシュ・ザ・スタンピード Next Yな戦慄/烈火剣精は見た! スバル・ナカジマ Next 散る―――(前編) 相川始 Next 散る―――(前編) 柊かがみ Next 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マクロスなのは 第24話『教導』 前半←この前の話 『マクロスなのは』第24話 後半 (*) 10分後 「え~!? ダメだよシャーリー、人の過去勝手にばらしちゃあ!」 六課に帰還してすぐ伝えられた事実に思わずその言葉が口をついて出た。 なんでもティアナ達に教導の意味を教えるために自分の撃墜の話をしてしまったのだと言う。 「ダメだぜ、口の軽い女はよぅ」 バルキリーから降りて何事かと見に来ていたアルトが愚痴る。普段の彼のセリフとは思えなかったが、なぜだが違和感はなかった。 「あの・・・・・・その・・・・・・見てられなくて・・・」 シャーリーは頭を下げるが事態はそんな簡単ではない。自分の撃墜に関わる情報は管理局内では未だに『TOP SECERT(最高機密)』であり、違反すれば問答無用で軍法会議になりかねない。 それも機密に関わることなので完全非公開で行われ、どうなるか全くわからない。 だがなのはは、この中に告発するような者はいない事を知っていた。 なぜならこれが機密である事を知っているのはフェイトとヴィータ、そして自分だけだったからだ。 アルトやさくらも─────いや、教導の卒業者には〝教訓〟として話していたし、完全無欠に無関係な天城君は 「(ドラマの)続きはどうなった!」 と叫んで既に宿舎に飛び込んでいた。 (もう・・・・・・) ため息をつくと、頭を下げて両手を合わす困りものの友人に再び目をやった。 (仕方ない。言うのが少し早くなっちゃっただけかな) 思いなおした彼女はシャーリーからティアナの居場所を聞き出すと、義務付けられている報告を済ましてそこに向かった。 (*) 機動六課敷地内 桟橋 ティアナはこの場所が好きだった。 夜風に吹かれながら明るい月と対称的な暗い海とを眺め、この真夏に涼しげな波音を聞けるこの場所が。 普段は訓練が終了して2,3分ほどゆっくりしていく場所だったが、ここへ来てもう20分。まるで不思議な魔法がかかったようにその場を動けずにいた。 早く強くなりたいと思っていた。だけど、間違ってるって叱られて、隣を走る相棒にも迷惑かけて悲しい思いをさせた。 これらの出来事は彼女を深く落ち込ませた。 (それに、私は結局・・・・・・) (*) 「ティア・・・・・・」 彼女から『独りにして』と言われていたスバルだが、遠く離れた茂みに隠れてエリオ、キャロと共に彼女を見守っていた。 そこに数人の闖入者が現れた。 「アルト先輩?」 スバルの疑問形の呼び掛けに、彼は無声音とジェスチャーで 「よ!」 と挨拶する。その後ろでもさくら、そしてシャーリーが 「こんばんは」 と会釈した。 どうしたのか聞こうとしたスバルだが、ティアナの声が聞こえてきたため中断された。 『なのは・・・・・・さん?』 振り向いたティアナの視線の先を追うと、軽く手を後に組んだなのはの後ろ姿があった。 (*) なのははそのまま自らの隣に座り込み、涼しむように、明るい月が暗い海に沈んでいく幻想的な風景を眺める。 そんな沈黙が10分ほど・・・いや20秒ぐらいの事だったかもしれない。ともかく、その沈黙に堪えられなくなって口を開く。 「・・・あの、シャーリーさんやシグナム副隊長にいろいろ聞きました。」 「〝なのはさん〟の失敗の記録?」 「え・・・・・・」 てっきり「なんの話?」と聞かれると思っていたティアナは少し狼狽する。 「あ、いえ、そうじゃなくて─────」 ティアナは自らの思考力が上手く回っていない事を改めて実感した。なのは達が帰投してからそれなりに時間が経過しているのだから、シャーリーでもシグナムでも聞く機会があったはずだ。 そんな簡単なことすら失念していたことにティアナはすこし可笑しくなった。 「無茶すると危ないんだよって話だよね」 なのはの確認に、ティアナの頭ではさっきの話がフラッシュバックする。 普通の、魔法すら知らなかった9歳の女の子が、魔法をその手にしてすぐに死闘を繰り返した。 少女はその後も自分の信念と守りたいもののために「早く強くなろう」として命懸けの無茶をし続け、遂には撃墜され、瀕死の重傷を負ったという話。 その少女が目の前にいるなのはであると聞かされたティアナの解答は、1つしかなかった。 「すみませんでした・・・・・・」 なのははそんなティアナに頷き1つを返した。 (*) 「じゃあわかってくれたところで聞くけど、ティアナは自分の射撃魔法をどうして信じないの?」 「それは・・・・・・兄を最後の最後で守りきれなかった魔法だから・・・・・・」 ティアナと彼女の兄ディーダ・ランスターの射撃魔法は少し特殊で、通常の半分以下の大きさの魔力球(魔力弾)を使用する。これは誰も使えないから特殊というわけではなく、練る魔力量が少ないため6~8歳の子供が普通の魔力球の練習のために使う。 つまり、リンカーコアがあるものなら誰でもできるという事だ。 しかしほとんどの場合で真っ直ぐにしか飛ばず、誘導性能や機動力など汎用性に優れた通常の魔力球には到底及ばないため使われないのだ。 しかしディーダはこれを究めることによってそれを練習用から実戦レベルにまで引き上げた。 練る魔力量が少ないということはそれだけ早く生成でき、小さいということは空気による減殺が少なくなり、より遠距離に届く。 また、真っ直ぐにしか飛ばないというのは最高クラスの信頼性の象徴であり、なのはの砲撃ですら反動で多少のブレが出る。つまり戦場の原則である『敵より早く、敵より遠くから、敵より正確に狙い撃つことができる』そんな技だった。 事実彼の技術は陸士部隊の目に止まり、装備改編前に負担の大きい魔力砲撃に代わる主力攻撃方法となっていた。 閑話休題 「そっか・・・・・・でも模擬戦でさ、自分で受けてみて気づかなかった?」 なのはの問いかけの意味が分からず首を捻る。 「ティアナの射撃魔法って、ちゃんと使えばあんなに早く撃てて、当たると危な いんだよ」 「あ・・・・・・」 「私は今まで一度もティアナとは撃ち合ったことはないでしょ?だって正面から早打ち勝負したら絶対ティアナの方が早くて正確に当たるから。だから、そんな一番いいところをないがしろにしてほしくなかったんだ。・・・・・・まぁ、でもティアナの考えたこと、間違ってはいないんだよね」 なのはは言うと、隣に置かれていたティアナのデバイス『クロスミラージュ』を手に取る。 「システムリミッター、テストモードリリース。高町なのは一等空尉。承認コード、NCC-1701A」 『OK,release time 60 seconds.(承認。解除時間60秒。)』 解除を見届けたなのははデバイスを起動状態にし、ティアナに渡す。 「命令してみて。〝モード2〟って」 ティアナはそれを受け取ると、おそるおそる指示を出す。 「モード・・・・・・2」 直後銃全体がオレンジ色に瞬いたと思うと 『Set up.dagger mode.』 という復唱と共に変形していく。 フロント・サイト(照星)の付いたマガジンを兼ねるグリップと、ピストルグリップ辺りで折れ・・・いや、折れていた物を引き起こしたというほうが正しい。 ともかく、引き起こされて真っ直ぐになった銃身は、ピストルグリップの下から魔力刃で覆うようにして銃口までつながる。 そして最後に銃口から、自らが作戦時無理やり作った魔力刃より大きなそれが、まるで短剣のように伸びた。 「これ・・・・・・」 自らの相棒の変貌に目を白黒させるティアナになのはは説明する。 「ティアナは執務官志望だもんね。ここを出て、執務官を目指すようになったらどうしても個人戦が多くなるだろうし、将来を考えて用意はしてたんだ」 ティアナは規定の60秒が経ったのか元に戻ったクロスミラージュを握りながら涙する。そんな彼女になのはは続けた。 「クロス(近距離)はもう少ししたら教えようと思ってた。でも出撃は今すぐにでもあるかも知れないでしょう?だからもう使いこなせてる武器と魔法をもっと確実なものにしてあげたかった。だから1つの技術を身につける事が目的のさくらちゃんとは違ってゆっくりやってたんだけど・・・・・・ゆっくりって地味だから、あんまり成果が出てないように感じて、苦しかったんだよね。・・・ごめんね。」 「ごめん・・・・・・なさい・・・・・・こんなに私のために準備してくれてたのに・・・・・・私、なのはさんの期待に応えられなかったみたいで・・・・・・」 「・・・・・・え?どうしてその結論!?」 「だって2発目の砲撃、なのはさん、結構本気で私を落としにかかったじゃないですか!」 「ああ、それは・・・・・・」 なのはにとって触れたくなかった、できれば触れずに行きたかったこの事柄。しかし残念なことにティアナはその事実に気付いていたのだ。 もし彼女が事前に彼と接触せずにこの場面に遭遇してしまっていたら、バレまいと思って彼にしたときとまったく同じ嘘をついて煙に巻こうとしただろう。 (なんてバカだったんだろ・・・・・・私・・・・・・) この分では自分の教える優秀な生徒達の前では、彼にしたような嘘を見破るなど児戯にも等しきものだったようだ。 だからなのははそれを教えてくれ、さらには受け止めてくれた彼に改めて感謝した。 「ごめん!実は・・・・・・あれは私のせいなの!」 なのははすべてを話した。 彼女自身から湧きあがった黒い考え、そしてそれに至った理由を。 ティアナはこの告知を少し驚いた様子だったが静かに聞き入り、最後にはどこか嬉しそうな表情へと変わっていた。 こうなると納得出来ないのはなのはの方だ。自分は最悪の場合ティアナ自身の魔導士生命に終止符すら打ちかねない行為を教官の身の上で行ったのだ。批難される事こそあっても、その様な表情を浮かべられる場面では無いはずだっだ。 「落ち着いてるんだね」 「はい。だって、私の前にそれを怒ってくれた人がいるみたいでしたから」 「それってーーーーー!?」 「私、宿舎の屋上から見たんです。なのはさんとアルト先輩が言い争ってるのを。・・・・・・先輩すごいですよね、あんなに離れてたのにちょくちょく何を言ってるのか聞こえるって」 「・・・・・・」 「その時は断片的過ぎて先輩がどうしてあんなに怒ってたのかよくわからなかったんですけど、やっとわかりました。たぶんですけど、アルト先輩に嘘をついたんですよね?」 ティアナにどこまで聞かれていたかわからない以上、嘘を重ねても仕方ない。なのはは正直に頷く。 「でも、今話してくれた話は本当の方だった。だからちょっとびっくりしましたけど、なのはさんがちゃんと私と向き合ってくれてるってわかったらうれしくって」 その顔にウソはない。その事実になのはは安堵したが、彼女のセリフはまだ終わっていなかった。 「・・・・・・でも、やっぱりちょっと強引だと思います。不発だったからよかったですが、もし撃ってたら私、ここにいられませんでした」 こちらの心情は察してくれたが、さすがにティアナもあの砲撃を無条件に看過することはできなかったようだ。 そこでなのははひそかに温めていたできれば切りたくなかった打開策のカードを使うことにした。 「ごめんね・・・・・・・それで考えたんだけど、ティアナ言ってたよね?さくらちゃんみたいな教導をしてほしいって。もしティアナが望むなら明日からでもできるけど、どうする?でも私は・・・・・・あー、もちろんティアナ達全員をどこに出しても恥ずかしくないエース級のAランク魔導士にしてみせるよ!だけど私ね、あなた達には―――――!」 「いいですよ、このままの教導で」 ティアナは言うと、座り込んでいたポートから立ちあがって清々しそうな表情で大きく伸びをする。 「本当言うと私、なのはさんに煙たがられてる、手を抜かれてるって思ってたんです。でも、全然そんなことなくて・・・・・・。だからもう、そのことはいいんです。それに今の様子だと、この教導には普通とは違う秘密があるみたいですし」 「にははは・・・・・・」 危うく言いそうになったが、立場上はにかみ笑いで応える。しかし内心切り札のカードの無力化に焦っていた。 「(これ以上私がティアナにしてあげられることなんて・・・・・・)」 「そこで私から一つだけお願い、聞いてもらっていいですか?」 「なに・・・・・・かな?」 脳裏を最悪の可能性が過る。 小さきは自らの職権の乱用、果ては犯罪まで。ティアナがそんなこと願うわけないと思ってはいても、彼女の魔導士生命を奪うかもしれなかった対価としてはそれも止むをえぬとも思えてしまっていた。 だからティアナの次の言葉を聞いた時、なのはは心底安心したという。 「もう一度、模擬戦を受けさせてください!」 なのはは自らの生徒の純真さと安心感に万感の思いをもって頷き、それに応えた。地平線の先に見えていた月は軌道の影響で沈まず、新たに登ったもう1つの月とともにクラナガン湾を照らしていた。 (*) スバルには2人の会話は聞こえなかったが、どうやら和解できたようなのでそっと胸を撫で下ろした。 そんな彼女の肩が〝とん〟と叩かれる。振り返るとさくらが〝昨日と同じジェスチャー〟をしていた。 その意味を即座に理解したスバルは頷くと、ここにいたギャラリーと共にその場から撤退した。 (*) なのは達が戻ってきたのは10分後だ。2人はロビーに入るなり驚く。 「よぅ、遅かったじゃねぇか」 婉曲語法で2人を迎えたヴィータの手には数枚のトランプが握られている。 また彼女だけでなく、シグナムやシャーリー、アルト、さくらにフォワードの3人と総勢8人が1つの机を囲んで同じようにトランプを握っていた。 「・・・みんなどうしたの?」 しかしなのはの問いはアルトの宣言でかき消された。 「いざ、革命!」 放られる1枚のジョーカーに3枚のファイブ。しかし上には上・・・・・・いや、下には下がいた。勝ち誇った顔をするアルトの前に4枚のスリーが放られたのだ。 驚愕するアルトに放った主が厳かに告げる。 「勝ちを急ぎすぎたな大富豪よ」 シグナムは微笑を浮かべると8切りして4を投げると1抜けした。 盛者必衰。アルトは一気に都を追われることになった。 悔しげに項垂れるアルトと大富豪に興じる人々。なのはとティアナは石像を続けていると、背後の入り口の扉が開いた。 「お、やっとるやっとる~」 現れたのは何か箱を持ったはやてとフェイトだった。箱には〝ビンゴ抽選機〟とある。 「いったい何事なの?」 なのはのその問いに、はやては笑顔で答える。 「さくらちゃん発案のビンゴ大会や。・・・・・・おーい!みんなこっから1枚とってな」 はやての呼び掛けに大富豪に興じていた人々がわらわら集まって来て、ビンゴカードの束から1枚ずつ引き抜いていく。 「さぁ、ティアナさんもなのはさんもどうぞ」 空気から取り残されていた2人もさくらに招き入れられ、和やかな、そして楽しげな人々の輪の中に入っていった。 (*) そのビンゴ大会はひどく白熱した。賞品として先着3名にゲームに参加した者なら一度だけ言うことを聞かせられる〝王様カード〟なるはやて特製の手作りテレカが手に入るためであろう。 途中ロビーに来た天城が司会進行を申し出たり、ヴィータがビンゴ抽選機(取っ手を回して番号のついたボールを出す機械)を盛大回して誤ってぶちまけるハプニングがあったりと波乱を巻き起こした。 しかし誰の顔からも笑顔は片時も消えず、階級などない学校のレクレーションのように和気あいあいと進行した。 そしていろいろあって何度か振り出しに戻り、3枚目になってしまったビンゴカード。おかげでまだ勝利条件であるトリプルビンゴに到達した者はいなかった。 「─────54番!さぁ、誰かいませんかぁ!」 天城がハイテンションで転がり出た球の番号を読み上げる。それに1人の少女がニヤリと微笑んだ。 「ふ、みんな済まねぇな。トリプルビンゴだぜぇ!」 ヴィータが雄叫びと共にカードを持った右手を突き上げた。 そして天城から王様カードを受け取ると、〝ビシッ〟とアルトを指差した。 アルトは自らの一列も埋まっていないカードを見て覚悟を決める。 そしてヴィータは王様カードをどこぞの長者番組の紋所のように彼にかざすと、高らかに宣言した。 「早乙女アルト!私と明日勝負しろ!」 極めてヴィータらしい命令にアルトはため息をつく。今や彼の方が上官なので拒否権がないことはなかったが、余程と言える断る理由が思いつかなかったようだ。 「仰せのままに・・・・・・」 体の演技こそ王妃に従えるナイトのようであったが、不服そうに答えたという。 (*) その後また振り出しに戻るなど激闘が20分ほど続いてようやく残りの2枚の行き先が決定した。 それはどういう因果かティアナとアルトであったが、2人ともすぐには権利を行使せず、夜も遅かったのでそのまま解散する事になった。 (*) 次の日 スターズ分隊の再模擬戦は、引き分けに終わったライトニング分隊の後に行われた。 2人の機動は訓練通りだが、クロスシフトAからBや、BからAの変更の流れは滑らかで、なのはをずいぶん手こずらせたという。 そして───── (*) スバルの連続攻撃とティアナの間断ない誘導弾の攻撃を受け、白いワルキューレは遂に地上に引きずり下ろされた。 しかし地に足を着いた彼女の砲撃力はそれでも強力であり、高度の優位に立ったスバルでも近づけなかった。 だがそんな彼女の前に虚空からティアナが現れた。 この間合い、シールド展開は間に合わない。まさに一騎打ちの早撃ちの距離だ。 どうやら早撃ちなら勝てるという助言に忠実に従ったらしい。 だが───── (甘い!) なのはは魔法の起動の邪魔になるレイジングハートを右手に持ちかえると、利き手である左手の人差し指をティアナに向ける。 「クロスファイヤー、シュート!」 放たれる小型魔力弾。確かにティアナの射撃魔法は優秀だが、その魔法を模倣できないわけではない。 なのはとの勝負においては単純な魔法の起動時間の勝負ではないのだ。 (惜しかったけど残念だったね) なのはは勝利を確信した。しかしここは地上。つまりティアナのフィールドだった。 魔力弾はティアナを貫通して、そのまま彼女ごと消えた。 「フェイク(幻影)!?」 続いてレイジングハートが右から飛翔してきた魔力弾によって弾かれ、地面に転がった。 「え!?」 そちらを見ると、砲撃用魔法陣を展開したティアナがいた。 そう、何もかも罠だったのだ。 わざと目の前に出現して助言に従った一騎打ちが狙いであるようにアピールして見せたのも、なのはが砲撃を行わずいつもの癖でレイジングハートを持ちかえる(デバイスにプログラムされていない魔法を本体経由で使おうとすると、無駄に処理しようとして発動が少し遅れるため)のも、全てティアナの狙い通りだったのだ。 あたかも助言に従った演技をすることによって、本来レイジングハートによって飛行魔法などの面において優越するがゆえに、選択肢が多いはずのなのはの選択肢を完全に奪い取る老獪な罠。 なのはは急いでレイジングハートに駆け寄るが間に合わない! 結果として右手のビルの2階から放たれたオレンジ色した魔力砲撃が、無防備の彼女を直撃した。 (*) 「やったぁ!」 ティアナがビルから出てくると、彼女を迎えたスバルにハイタッチした。 なのはは晴れていく煙の中から姿を現すと、そんな2人に笑いかけた。 「うん。文句のつけようがないくらいいい戦いぶりだったよ。それに一撃どころか撃墜されちゃうとはね」 教官の面目丸つぶれだよ~と彼女は嬉しそうに苦笑すると、遠くで観戦するライトニングの2人に集合の合図を放った。 (*) 「みんなお疲れ様。今日は午前までで訓練は終わりだけど、定期模擬戦のレポートを書いて今日の18時までに提出してね」 「「はい!」」 4人は今回引き分けか勝ちだったので気分は良さそうだ。いつもの訓練終了時と違って覇気があった。 「あと、解散前に私から渡すものがあります」 『何だろう?』という顔をする4人の前に、昨日渡すはずだった4冊の冊子を取り出した。 「今日は訓練開始から6カ月の節目の月だからね。これまでやってきた訓練の要点とかアドバイスとかをまとめてあります。暇な時でいいから目を通してね」 「「はーい!」」 4人はそれを受け取ると、互いに目配せしながら指示もないのに整列した。 「え?・・・・・・みんなどうしたの?」 ティアナが代表するように応える。 「実は私達、昨日話し合って、なのはさんに伝えたいと思ってた事があるんです」 なのはからすると全く意表をついたものであり、何を言われるか少し心配したが、先を促す。 すると4人は声を揃えて合唱した。 「「半年間ありがとうございました。これからもよろしくお願いします!」」 それはまるで小学生のようなお礼の言葉だったが、心がこもっているためノー・プロブレム。 なのはは最上級の笑顔で 「こちらこそ」 と応えた。 この時、なのはは照れ笑いする自らの教え子達を見て誓ったという。 『この子たちは絶対私の手でどんな状況でもあきらめずに打破できるような一流のストライカーにして見せる。他の生徒のように短期ではできなかったけど、この子たちなら絶対大丈夫。だから何があっても、誰が来ても、この子達は落とさせない。私の目が届く間はもちろん、いつか一人で、それぞれの空を飛ぶようになっても』と。 (*) さて、昼頃から始まったアルトvsヴィータの模擬戦だが、一進一退の攻防をみせた。 そのため我慢出来なくなったさくらとフェイトが、続いて天城とシグナムが参戦する大演習となった。 勝敗についてはまた機会があれば記述したいと思う。 その2週間後、サジタリウス小隊の出張任務は解かれ、別れを惜しみつつフロンティア航空基地に帰投した。 ―――――――――― 次回予告 アルト達が第一管理世界に来てからここまでで半年が経っていた こんなにも長い間、第25未確認世界は指をくわえて一体なにをやっていたのか!? 次回マクロスなのは第25話「先遣隊」 想い人を奪われた少女の思いが炸裂する―――――! ―――――――――― シレンヤ氏
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魔法少女フルメタなのは 第四話「wake from death」 宗介達の歓迎会からしばらく経ったある日。 フォワードメンバーの訓練が一区切りついたという事で、その日は丸一日の休日となった。 スバル・ティアナ・クルツはバイクで、エリオとキャロはモノレールで町へ向かうらしい。 ちなみに宗介は隊舎の近くで釣りをする為、一人出かけずに残った。 釣糸を垂らし、間に読書していると、スバル達からの通信が入る。 「相良さ~ん、そっちはどうですか~?」 「問題ない。ここはなかなか良い場所だ。すでに何匹か釣り上げた。」 「オメーも一人じじくさい事してねーで、一緒に来りゃ良かったのによ。」 「特に用事も無かったし、読みたい本もあったのでな。休みの日はやはり釣りか読書に限る。」 「ほんっとにオメーはじじむさいな…他に何かねーのかよ?」 「まぁいいじゃないですか。相良さん、帰る時にお土産買っていきますけど、何か欲しい物とかあります?」 「いや、特に希望はない。」 「じゃあ何か見繕って買っていきますね。それじゃ、また後で。」 「ああ。」 そして通信は切れた。 「平和だな…」 宗介は何気なく呟く。 元の世界で紛争や革命の火消し役として世界中を飛び回っていた宗介にとって、今こうして静かに過ごす時間は極めて貴重なものだった。 穏やかで何もない日が無い訳ではなかった、多忙で命懸けの日々と比べれば、それは束の間の休みにしか過ぎず、それ故宗介は一人静かに過ごせる時はこうして釣りと読書を行い、短い時間をより充実させているのだ。 しばらく釣りを楽しんでいた宗介はふと元の世界の事を思い出す。 (大佐殿…息災でいるだろうか。帰ったら怒らせた事を謝らなくては… カリーニン少佐…あのボルシチの味も今では懐かしいな。…二度と食う気はないが。 マオ…帰ったらまたどやし付けられるな。それで帰還祝いでまた朝まで酒盛りだろうな…) そして、やはり思い出すのは… (千鳥、今君はどうしているだろう…) 宗介の大切な女性、千鳥かなめの事だった。 だが、かなめの事を思い返す宗介の表情は暗かった。 はやては元の世界を探してくれると言ったが、管理局も把握しきれていない無数の世界の中から、特定の世界を探すというのは容易な事ではなく、長い時間を要するのは確実だったからだ。 (千鳥、俺は…) 宗介はそんな落ち込んでいる自分に気付き、浮かんできた不安を払拭する。 (何を考えているんだ、俺は。結果も出ていないのに諦めるのは早過ぎる。) 宗介は空を見上げ、心に新たに誓う。 (待っててくれ千鳥。俺は必ず、君の元に…) そこまで考えた宗介に、はやてからの緊急通信が入った。 曰く、エリオ達が町中でレリックとそのケースを運んでいた女の子を発見、ガジェットの襲撃の恐れがある為、宗介も応援に向かって欲しいとの事。 「なのはちゃん達ヘリで現場に向かわせるから、相良君もそれに同行してや。」 「了解しました。」 十分後、宗介達を乗せたヘリが六課から飛び立った。 ミッドチルダから遠く離れた山岳地帯。 その地下深くに、狂気の天才科学者ジェイル・スカリエッティのアジトはあった。 「ガジェット、及び“新型”は間もなく準備が完了します。」 戦闘機人ナンバー1、ウーノが報告する。 「そうかね。クアットロ達はどうしたかな?」 「そちらも問題ありません。ルーテシアお嬢様も予定の位置で待機されています。」 それを聞き、スカリエッティは不敵な笑みを浮かべる。 「フッフッフッ、よし、後は聖王の器をこの手に…」 その時、二人のいる部屋の扉が開き、一人の男が入って来た。 「ようドクター、随分とご機嫌だな。」 スカリエッティは自分に呼び掛けてきたその男を振り返る。 「やあ君かい。まぁ少しね。それで、私に何か用かね?」 「ああ、デバイスも新しい身体も問題はねぇんだが、訓練室で鉄屑と遊ぶのも飽きてな。暇潰しになる事はねぇかと思ってな。」 スカリエッティの作品を遠慮なく鉄屑と呼ぶその男をウーノは睨み付けるが、男は何処吹く風だ。 「そうだね…丁度今ナンバーズが作戦で町に出ているんだが、それの応援に行ってくれないかい?管理局も気付いてるだろうしね。」 「OKだ。ところで、管理局とやらの人間は殺していいんだな?」 「構わないよ。我々の計画が成就する為の尊い犠牲さ。 転送魔法陣の準備はしておくから、早速向かってくれたまえ。」 「クックックッ、あいよドクター。」 男はそのまま扉から出て行く。 男が出て行った後、ウーノはスカリエッティに話しかける。 「ドクター、何故あんな男をここに置いているんですか?」 「彼の戦闘力には目を見張るものがある。下手すればナンバーズも敵わない位にね。 何より、私と彼は様々な所で共通している“友人”だ。追い出す理由はないよ。」 「あの男は危険です!放っておけば我々に危害を…」 「狂人の考えは狂人が一番分かるのだよ。今すぐ彼が裏切る事はないし、危険な時は相応の処置をするさ。 それより今は作戦が第一だ。集中したまえよ、ウーノ。」 「…分かりました。」 作業に戻るウーノ。 「ククッ、さあ、全ての始まりだ!」 ミッドチルダ都市部。 「来ました!地下と海上にガジェット、それと地上に…アンノウン多数!」 シャーリーが報告する。 「アンノウン?ガジェットの新型って事?」 「いえ、それとはまた別系統のような…とにかく画面に出します。」 そして目の前に表れた映像には、宗介達にとって見慣れた物が映っていた。 「〈サベージ〉!?」 カエルの様な頭部、ずんぐりした胴体は、正しく見慣れた旧型ASそのものだった。 「相良さん、知ってるんですか?」 「俺達の世界の二足歩行兵器だ。元の物よりは小さいが…何故あれがここに?」 「考えるのは後だよ。私達は海上の敵を殲滅するから、スバル達は地下、相良君達は地上をお願い!」 「了解!」(×7) それぞれの持ち場へ移動する隊員達。 デバイスを起動し、やって来る敵を待構えている宗介達は、その合間にスバルの言う人造魔道士についての話を聞いていた。 「聞けば聞く程胸クソ悪くなる話だな。えげつねえ事しやがるぜ。」 「同感だな。」 「しかし何でその人造魔道士とやらがレリックを…っと宗介、お客さんだぜ。」 宗介が前方を注視すると、二十機程の〈サベージ〉が接近していた。 「ロングアーチ、こちらウルズ7。敵機とエンゲージ、攻撃を開始する。」 『ロングアーチ了解。ウルズ6、ウルズ7は敵機を迎撃して下さい。』 「ウルズ7了解。」 「ウルズ6了解だ。さ~て、おっ始めるぜ!」 掛け声を上げ、魔力弾を発射するクルツ。 しかし弾丸は当たる直前で、サベージの発したAMFによってかき消される。 「チッ、AMFを積んでやがったか。そんなら…M9、弾種変更、多重弾殻弾だ。」 『了解。多重弾殻弾』 カートリッジが排出され、ライフルの銃口に多重弾殻弾が精製される。 「食らいなカエル野郎。」 放たれた銃弾はAMFの壁を貫き、見事サベージの胸に命中する。 だが今度は分厚い装甲が貫通を阻み、サベージはすぐに動き始めた。 「クソッタレ、ガジェットより手強いな。 おいソースケ、こいつら以外と…」 宗介に念話で話しかけたクルツは、ラムダ・ドライバを発動した宗介がいとも容易くサベージを破壊する場面を見た。 「こちらは問題ない。そっちはどうだクルツ?」「…あーそーだな、コイツ反則技持ってたんだったな…」 「クルツ?」 「何でもねーよ、早いトコこいつらを潰すぞ!」 「了解だ。」 通信が切れた後、クルツはぼやく。 「ったく、全部テメーらのせいだ…吹きとべこの鉄ガエル!」 イライラをサベージにぶつけるクルツだった。 ミッドチルダ海上。 ここでは現在なのはとフェイトが、幻術と混合した敵の増援に苦戦を強いられていた。 「防衛ラインを割られない自信はあるけど、このままじゃ…」 「埒が明かないね…こうなったら限定解除で…」 そんな二人に、はやてからの通信が入る。 「それは却下や、なのはちゃん。」 「はやてちゃん?」 「二人ともそこから離れてや、今から広域魔法攻撃をするで!」 「はやて、まさか限定解除を!?」 「せや。戦力出し惜しみして被害広げたないからな。 それに見分けが付かない以上、完全に殲滅するしかないやろ?」 「ちょい待ち~、はやてちゃん。」 今度ははやてに対してクルツが割込みをかけた。 「クルツ君!?どうしたんや?」 「限定解除とやらをする必要はないぜ。要は敵が見えりゃいいんだろ?」 「それはそうやけど、一体どうする気なん?」 「俺のM9にはASだった頃の機能が一部残ってる。その中にゃ、データを他の機とリンクさせるって物がある。」 「それで?」 「M9の特殊魔法“妖精の目”の効果と、なのはちゃん達のデバイスをリンクさせりゃ幻影が分かる筈だぜ。」 「そんな事可能なん?」 「今やる所さ。M9。」 『了解。データリンク開始、“妖精の目”を各デバイスに伝達します。』 約十秒後、レイジングハートとバルディッシュに妖精の目の効果が表れた。 「…見える、実体が見えるよ!」 「これならいける、なのは!」 「うん!いっくよー!」 ガジェットの群れに突っ込み、次々に破壊する二人。 「クルツ君、大きに!後で何かお礼するで!」 「マジで!?それじゃあはやてちゃんのキッスを…ダメ?」 「うーん、口はNGやけど、頬にならしてあげてもええよ。」 「うおおおっしゃあああああーーーー!!!」 狂喜するクルツ。欲望に忠実な男であった。 廃棄都市のビルの屋上。 そこで二人の戦闘機人が海上の戦闘を見ていた。 「幻術がばれたみたいだね。」 「そんな、嘘でしょ!?私のシルバーカーテンがもう見破られたっていうの!?」 「多分、あっちに幻影を判別する技術か術者がいるんだよ。」 クアットロとディエチがそれぞれ言う。 「仕方ないわね。ディエチちゃん、ガジェットしが全滅する前にヘリを砲撃よん。」 「それはいいけど、マテリアルまで撃っちゃって大丈夫なの?」 「あれが本当に聖王の器なら、砲撃くらいじゃ壊れないわ。いいから早くして。」 「分かった。IS発動、ヘヴィバレル。」 イメーノスカノンを構え、エネルギーチャージを行うディエチ。 ズドン! 「これで終わりか。」 二十機目のサベージを屠った宗介は、周囲を警戒しつつマガジンを交換する。 「アル、辺りに敵の反応は?」 『今の所はありません。ですが、遠方のビルの屋上に高エネルギー反応を確認。味方のシグナルではありません。』 「何!?」 その時ロングアーチから、現状では最悪の通信が入る。 「ロングアーチより各位、廃棄区画のビルの上に砲撃チャージを確認!目標はおそらく輸送ヘリ!」 (分隊長達はまだ海上、間に合わない…!) そう判断した宗介は、アルに命令を下す。 「アル、緊急展開ブースター!」 『了解。緊急展開ブースター作動』 宗介の背中に巨大な魔力の翼が広がり、同時に表れたブースターが火を吹き出す。 これは魔力を著しく消耗する代わりに、通常の飛行魔法より遥かに高速で飛行出来るという魔法である。 尚、AS時は戦闘機の様に飛び続けるだけだったが、アルがデバイス化した際にヘリの様にホバリングする機能が追加されている。 宗介が飛び立つと同時にディエチの砲撃も発射され、宗介とヘヴィバレルのエネルギーはほぼ同じスピードでヘリに向かう。 (間に合え!!) タッチの差でヘリに辿り着いた宗介はラムダ・ドライバを全開にし、砲撃を真正面から受け止める。 「おおおおおお!!」 砲撃と精神力の壁がぶつかりあい、辺り一面に閃光が走る。 閃光が止んだ時、そこには肩で息をしている宗介がいた。 「ロングアーチ、こちらウルズ7、ヘリは守りきったぞ。」 「相良さん!」 大喜びで答えるシャーリー。 「これより砲撃地点に向かい、犯人を確保する。 「あらら~って、あの能力って…」 「あの男と…同じ?」 「マズいわ、ディエチちゃん引き上げるわよ。」だが退却しようとする二人の足下に、魔力弾が弾痕を作る。 「っ!?」 「スナイパー!?」 「おいたをする悪い娘は逃さないぜ。 宗介、足止めはしとくから、早いとこ確保しろ。」 「了解だ。」 宗介はクアットロ達のいるビルに到着し、腰からショットガン“ボクサー”を引き抜いて言った。 「管理局機動六課だ。お前達を拘束する。」 だが宗介は不意に殺気を感じ取り、反射的にその場から飛び退いた。 ズガガガガガガガガ!! 銃声が響き、たった今まで自分の立っていた場所が穴だらけになる。 「よお~久しぶりだなぁカシムゥ。」 そして宗介は声のした方向を見た瞬間、息をするのも忘れた。 「まさかこの世界でもお前と出会うとはなぁ。運命ってやつを感じねぇか、カシム?」 「何故だ…何故お前がここにいるんだ…」 「おいおい、もっと気の利いた事は言えねえのかよ、感動の再会なんだぜ?」 「何故生きているんだ、ガウルン!!!」 そこにいたのは、宗介が完全にトドメを刺した筈の仇敵、最凶のテロリストガウルンだった。 続く 戻る 目次へ 次へ
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FrontPage 星間文明TOPページ。 目次 目次更新履歴 関連リンク 国家概要政治体制 出国制限 中央行政機関 司法制度 主な組織エストリルディス恒星帝国(首都) ツォルマリア文明統一機構 惑星ポリューテッドプラネット カラード国際連盟 サイバー・オーガン 歴史 外交入域制限 国交締結国 所属組織 締結条約 軍事地上軍務局 公共安全管理局 宇宙軍務局 更新履歴 1が最も新しく、3が最も古いものとする。 下記の記述が変更されていない場合、重要な更新ではない。 1 出国規制項目を追加。安全情報項目を入域制限に変更。 2 安全情報項目、地下プラントを追加。 3 行政、外交、軍事項目の更新。安全情報項目の追加。 関連リンク ツォルマリア文明統一機構 星間文明人物録 国家概要 星間文明統一機構(通称、星間文明)は、第二恒星エストリルディスを中核として統合された第四種国家である。 星間文明旗 国の標語 平和、団結、秩序 国歌 我等が世界に栄光あれ! 公用語 宇宙共通語 最高意思決定機関 文明最高評議会 首星 第二恒星エストリルディス 首都 首都船インペラティール 代表的な都市 メルバ・ラオムティカ、ネオ・ヴァルヴァラ市 首星人口 2600万余り 民族構成 人類種系51%、改変種系29%、原住種系16%、機械種系4% 公式略称 星間文明、文明機構 統一通貨 tuxoruma・Phel 政治体制 文明最高評議会を中核とした地方自治間での合議制。評議会は通常、中央政府と称するのが一般的。 星の最高権力たる中央政府は行政権を、法の守護者たる裁判所は司法権を、地方の代表らが集いし召集議会は立法権を有し、三権を分立している。 中央政府の長たる文明最高評議会議長は通常任期6年で、地方の有力者らと監察官とで構成される信任会議において選出される。信任されている限り続投可能。 召集議会の代表らに関しては地方ごとの自治権を尊重するため、その政治体制によって選抜法が異なる。 出国制限 ヴァレフォール歴4147年9月1日。 安全保障上の観点から、召集議会において自国民の出国を制限するための法案が可決されました。 ★文明国民の出国規定に関する段階レベルの概要 【段階レベル】 【備考】 0・yuu 個人の意志に基づき出国可能。犯罪歴がない限り自由に出国できる。 1・ko 総務局の審査によって出国可能。業務上の理由及び職員の経歴によって承認される。 2・ta 議長の命令によって出国可能。基本的に出国不可であるが、運営並びに外交上の都合によって承認可能。 3・vi 議会の議決によって出国不可。該当種族は何人たりとも出国できない。 例外 意図せぬ事態等、特殊な事例及び防衛任務上の都合他、他国の意向によって高度に判断される。要議決。 ※外国人には適用されない。 ※上記の事例を除き、議会の議決は絶対である。 ※文明国民には段階レベルによって帰国命令が発せられる。 ※指定された場合、既に国外に出国した者に関しては、その業務が終了次第、帰国とす。 ※指定された場合、任務なき一般人は「例外」を除いては即刻帰国すべし。 ※指定された場合、国外において必要な業務を抜けた者に関しては、問題なき種族に引継ぎを行う事。 ※指定状況によって適当な担当者が出国できぬ場合、無人機による引継ぎか、或いは「例外」の適用を以て対処する。 ※「3・vi」に指定された種族は「例外」が適用されぬ限りにおいて出国できない。 ※機械化市民に関しては機械種として扱われる。 ※犯罪歴のある者など、指定不穏分子は「例外」を除き出国できない。 【種族】 【現在の段階レベル】 人類種系 0・yuu 改変種系 0・yuu 原住種系 2・ta 機械種系 0・yuu 中央行政機関 【機関の正式名称】 【長の名称】 【備考】 文明最高議長府 アルビン・バイゴッド文明最高評議会議長(♂) 星間文明における最高意思決定機関。 国家戦略部 最高議長が暫定的に兼任 議長直轄の政策補助機関。加盟国との利害調整や議長への助言、政策立案等、包括的な役割を担う。 物流管理局 オラフ・ハーク物流管理局長(♂) 各種貨物の安全管理を司る機関。総務局と連携している。 総務局 カビーノ・アマージャ総務局長(♂) 星間文明の内務機関。加盟国の内政に関するフォローや入出国のチェックなど、事務的な任務に徹する。 法務局 アルカンジェロ・マッツィーニ法務局長(♂) 加盟圏における各国法の管理機関。基本法制の整備等、戦略部と連携している。 財務局 フローラ・デュルフェ財務局長(♀) 国庫の管理や統一通貨に関する信頼性の維持等、様々な業務を担っている。 公共安全管理局 アーマントゥルード・ローグ公共安全管理局長(♀) 治安の維持に特化している機関。一国で言う所の内務省軍的な存在。 外交統括部 ナミール・シャムス・ファルーフ外交統括部長(♂) 星間文明の外務省に相当する組織。 安全管理課 アンヘリノ・バスケス安全管理課長(♂) 外交部長直属の検閲機関。各種公文書の改竄や拡散の防止を担っている。 外交政策協議会 ジャン・クロード・バルビゼ外交政策協議会議長(♂) 有識者達で構成される助言機関。各種外交政策に関する研究や評価を行っている。 広報統括部 リノス・アルソレイ広報統括部長(♀) 文明国内における情報秩序を維持するための組織。 内務情報局 ミカエラ・ヴィンチェンティーノ内務情報局長(♀) 文明国内での情報分析業務を担当している組織。各部と連携している。 外務情報局 ビティア・マカショフ外務情報局長(♂) 文明国外での情報分析業務を担当している組織。各部と連携している。 通信監査局 アラベル・ベルクール通信監査局長(♀) 不健全な報道を取り締まるための事務機関。各部と連携している。 防衛統括部 グラハウド・グランドレイン防衛統括部長(♂) 文明の防衛を司る組織。 防衛情報局 カンタン・ルスュール防衛情報局長(♂) 防衛部の補助機関。各種安全保障に関しての情報分析業務を行っている。 宇宙軍務局 ボリス・カルナウホフ宇宙軍務局長(♂) 宇宙軍艦隊の指揮コードを管理している機関。運用に関して総合的なコストの削減も担っている。 衛星管理局 ジョルジュ・コンドロワイエール衛星管理局長(♂) 人工衛星の運用を司る機関。気象衛星のみ管轄外となっている。 研究開発局 ルーベン・ソウトゥーリョ研究開発局長(♂) 各種軍事技術の研究開発、並びに旧型兵器の再利用を目的として設立された組織。 地上軍務局 ロズモンド・ミシャロン地上軍務局長(♂) 宇宙軍務局の地上版。陸海空軍の指揮コードを管理している。 倫理審査局 ベニアミーノ・アルボレート倫理審査局長(♂) 兵士個人への賞罰を司る機関。憲兵局と連携している。 国家憲兵局 エルナン・グラナドス国家憲兵局長(♂) 憲兵機構の廃止に伴って設立された組織。軍内部における法秩序の維持や、交通整理を担っている。 警務統括部 ジャンカルロ・アメリア警務統括部長(♂) 星間文明の中央警察機関。加盟圏においての自由な行動権利が認められている。 防諜局 トバイア・ギャヴィストン防諜局長(♂) 他国間諜を取り締まるための機関。尋問に際しては多少の人権軽視も厭わない。 警務統括部は情勢に応じて四段階の警戒レベルを表す。 【D】 平時における通常の警備体制として機能する。 【C】 局所的な警戒態勢が敷かれる。該当区域は統括本部から出向してくる管理官の指示に従わねばならない。 【B】 惑星規模での厳重警戒体制となる。基本的にはこのあたりから防諜局が動きだすらしい。 【A】 全領域での厳重警戒体制となる。最高権力の発動により軍隊との共同作戦に移行。 経済統括部 アブラハム・ホルムグレン経済統括部長(♂) 国家経営を司る組織。内外への開発援助や各種助言等、安全保障にかかる補助を是とする。 工業管理局 ドゥイリオ・コーボ工業管理局長(♂) 公営の工業プラントを管理している機関。政府の方針により、年々縮小傾向にある。 食品管理局 グローリア・アンジェリコ食品管理局長(♀) 公営の食品プラントを管理している機関。広大な文明を保つための重要な役割を占めている。 通商管理局 マリアンナ・メリゲッティ通商管理局長(♀) 貿易事務を司る機関。惑星外諸国との取引において交渉を担う事もあるようだ。 環境統括部 クリスティーネ・エリクション環境統括部長(♀) 星間文明の環境監督機関。自然環境の保護や固有文化の保全を任務とする。 教育管理局 コンドラト・ブルイギン教育管理局長(♂) 悪質業者の排除や適正な教育行政の維持など、各種コンプライアンス業務を担っている。 医療管理局 クルト・ルーセンベリ医療管理局長(♂) 各種医療の研究業務を司る機関。近年においては生体のパンデミックに関する調査業務が主となっている。 厚生労働局 フセペ・アンチエータ厚生労働局長(♂) 労働環境の整備や各種公的保険など、国民生活に関わるものを取り扱っている。 宙域交通局 ケビ・ヘプケン宙域交通局長(♂) 各宙域での防災対策や交通管理を司る機関。気象衛星を運用している。 司法制度 概ね各国法に順ずるが、国際問題などは特別裁判所の管轄となっている。 ●特別裁判所 【機関名】 【概要】 最高裁判所 下記の最終審判。 特等裁判所 その他の問題に関する審判。 中央裁判所 中央行政府の問題に関する審判。 連合裁判所 自治連合間の問題に関する審判。 地方裁判所 地方自治間の問題に関する審判。 主な組織 エストリルディス恒星帝国(首都) 首都船インペラティールを中核とした帝政コロニー郡。首都船内部においては、議長官邸や各種統括本部が置かれている。 星間文明統一機構の中枢部として機能していると同時に、エストリルディス公爵家による厳格な統治体制が敷かれている。 ニーレンベルギア枢軸国の新生リゲイリアに次ぐ第三帝国として発足した。またの名をサード・リゲイリアとも称する。 ▲第二恒星エストリルディスの歴史 元は旧銀河帝国所有の恒星シャルディナ・トゥールであるが、紆余曲折を経て星間帝国に編入された。 遷都後にエストリルディスに改名。天殻(ダイソン球)に蓋われ、帝国随一の反物質生産拠点として栄えていたという。 軌道都市船が多数建造され、最盛期には人口4000万人規模にまで拡大するも、その後の敗戦によって一度瓦解した。 以降、長年に渡って数ヶ国の保護を受けたがいずれも滅亡し、国際会議の結果として社会帝国が保護を宣言するに至る。 しかし、カイバー星系への侵攻を行った事から文明機構と対立し、議論の末に恒星の管理権を手放すに至った。 その後、社会帝国への警戒を大義名分として文明軍が進駐し、これを接収するも、リゲイリアンによる政治的要求が過熱。 中央政府が事態の重大性に気づいた頃には召集議会の六割が懐柔され、星間文明の新たな主星として遷都するに至った。 ●首都船インペラティール ラ・ロシェール(星間帝国の都市船)をモデルとして建造された星間文明の首都船。リゲイリア系有力者らの帰属先であるが、各宙域における政治・経済・軍事・交通の中枢としても機能している。インペラティールには彼らの技術を駆使した新基軸の防衛機構が備えつけられており、軍事的な抑止力として機能している他、各種エネルギーの供給源としても大いに栄えつつあるという。また、リゲイリア系難民の悲願でもある祖国の再現を徹底するため、エストリルディス公爵家による擬似的な帝政が敷かれている。ヴァラノルカにおいてはリトル・リゲイリアとも称されているらしい。 ★召集議会 加盟組織の代表らが集う連邦議会。 当初は地上の加盟国が中心となって運営されていたが、公平性に欠けるため改革された。 近年においては、国民会議と意見を交えつつ協議を行うのが主流となっている。 ★国民会議 非公式の圧力組織。行政機構や議会に対して睨みを利かせている事から、事実上の反体制派として認識されている。 その主な構成員としては、旧憲兵機構の役員や一部独裁国家の市民等、参政権を持たぬ者が多いという。 ★星間文明円卓会議 星間文明の政界や財界に絶大な影響力を持つ組織。 主に一国の君主、または領地を持つ有力者などによって構成されている。 ★ラクササ・インスティテュート 星間文明に害なすファンタズマ(宇宙怪獣)への対処コストを軽減すべく、V.C.4142年に設立された巨大な研究機構。 理想的人道主義者によって齎された過去の災厄の経緯から、その行動権は関係省庁から文明軍の中枢に至るまで及んでいるという。 実のところ、防衛に託けて悪魔的な兵器の配備を促すための機関ではないかと疑われているが、関係職員はこれを一貫して否定している。 しかし、ツォルマリアにおけるラルヴァ(変異体)の生体を多数捕獲している事から、従来の開発規定より逸脱しつつある事は明らかだろう。 独立報道連合の指摘によると、「ロマクト・グループにおける旧リシド派と何らかの関係がある」との事で、色々と黒い噂が絶えない。 中央政府は上記の安全性を保障するため、公安による完全な職務介入を決定し、研究員の開発倫理を新たに定める事で合意した。 ツォルマリア文明統一機構 惑星ヴァラノルカを事実上支配している組織。その圧倒的な軍事力により、星間文明の国威を確固たるものしている。 主に地上の加盟国などによって構成されているが、カイバー星系においては事実上の第二種文明として認識されているようだ。 ★公共開拓団 開拓連盟と混同されがちだが全く異なる組織である。 深宇宙の探査から各国との通商に至るまで、何でもこなす万能な団体として有名。 平和主義であるが、紆余曲折の末に独自の軍を保有するに至った。 ★開拓連盟 惑星ヴァラノルカの宙域自治政府。 当初は地上国の直接統治下に置かれていたが、その後の革命によって強大な自治権を確立した。 協調を図る一方で地上人を憎む傾向が強く、何かと問題が絶えないという。 ★地下プラント自治政府 プラント種族によって運営されている組織。 地上世界では最大の自治勢力として一目置かれている。 ★ロマクト・インダストリー・グループ 星間文明において豪勢を誇る巨大なコングロマリット。 星間GDPの約三割を占めており、強大な政治的影響力を持つという。 ★独立企業連合 自治権を有する数多くの中小企業が集まり、協調している。 ★ツォルマリア文明通信機構 ロマクト社に次ぐ巨大企業にして、最大の独立報道機関。独自の軍を有している事から、国家による全面統制を受け付けない。 しかし中央政府との関係は重視しており、反体制派の情報活動を度々妨害している。ちなみにロマクト社との仲は至極最低らしい。 ★独立報道連合 通信機構から分離独立した組織。多種多様な通信社が属している。 ★ミトス管理区 惑星ミトスを中核とした研究コロニー郡。DBU研究本部の改革後、文明機構の軍政下に置かれている。 各種バイオテクノロジーに精通している他、大規模な軍事演習場としても大いに活用されているようだ。 惑星ポリューテッドプラネット 度重なる核実験によって汚染された惑星。旧アリア城を中核として復興を進めている。 また、グール族に対しては医療を施し、皮膚機能の回復を試みている。 食人料理に関しては自治圏においてのみ良としている他、ツォルマリアより罪人の身柄が提供されている。 カラード国際連盟 惑星カラードにおいて結束している国家間連合。以下の常任理事国が中核となっている。 ●セリス・ブルーニャ 通称、ブルーネ。かつてはヒンケル政権による独裁政治が続いていたが、文明機構の影響を受け半ば民主化した。 現在はヒンケル首相のメイチス党と、ヘイムラー総裁の新生ブルーネ党が連立内閣を構成し、統治を行っている。 ●ラーヴィリス連邦 通称、レッダス。粛正者スターリナによる恐怖政治が続いていたが、その更に上を行く艦隊兵士の干渉を受け一度崩壊した。 その後、紆余曲折あったが現在は民主化しており、復興も徐々に進みつつある。ブルーネ国とは相変わらず仲が悪いようだ。 ●グリーン共同体 通称、グリー。旧レッダス軍の占領統治下に置かれていたが、文明軍によって解放された。 帝室は残念ながら行方不明のため、国民主体による議会制民主主義へと移行している。 ●ギイロス合衆国 通称、キイロス。カラードにおいては唯一、本土を戦火に晒す事無く終戦を迎えている。 今やフィンスパーニアにも匹敵する超大国となっており、未曾有の繁栄を謳歌しているらしい。 サイバー・オーガン ※一時は新生ヴァルバラ共和国と仮称されたが、安全性の向上に伴い以前の名称に戻された。 ●惑星サイバーオーガン・プラネット 内部は冷え切っており地熱はない。海は存在しないが森林地帯と湖が広がっている。 しかし隕石の落下により磁場が消滅しそれによる気候変動により砂漠化していった。 (以上、サイバーオーガンより抜粋) 現在は巨大な宇宙基地として機能している。 ▲サイバー・オーガン特別法 人類と機械種の健全なる共栄を実現すべく施行された法律。 新生ドローンの基本的権利に関して定めている他、感情や芸術の抑制強要を硬く禁じている。 ただし、自ら進んで抑制する事については容認されている。 ★ネオ・バルヴァラ市 機械化政府が治める複合行政都市。人類式の経営概念が伝達された事により、経済機構の民主化が進んでいる。 ★エグゼクティブ・ウォーガン社 惑星オーガンのライフラインを担うコングロマリット。 オーガン系機械種(残骸の修理により復活を遂げた者)を中核として数多くの社員が働いている。 ネオ・バルヴァラ市においてはオーガン系列の工場を改修し、クリーン活用しているようだ。 歴史 関連する歴史項目 外交 友好関係の構築及び親善強化、並びに安全保障の維持を基本指針としている。 近年の方針としては内政不干渉を最大原則としているため、自らの安全や信用に危機を覚えぬ限りにおいては介入しない方針だ。 いわば、文明機構とその関係国の安寧が保証されている限りにおいては、例え他国の内政がどれほど常軌を逸していようと「知ったことではない」。 外交部として遊星王国の倫理原則と枢軸国の集団的安保政策を参考としていることから、従来の理想的人道に基づいての行動を厳に慎むものである。 (※但し、外交状況によるため全く同じように真似るとは限らない) なお、星間文明に対して能動的に工作行為を行うなど「安寧を脅かし者」に対しては状況によって報復も辞さないとの見解が示されている。 尤も、文明の存続を重視している以上は大局を見誤ることのなきよう、ある程度の柔軟性を以て対応する必要はありそうだ。 入域制限 エストリルディス恒星帝国 過去において精力的に活動していたリゲイリア星間帝国を崇拝する者は文明機構において数多くいる。それはかつてのツォルマリアにおいて蔓延していた理想的人道主義を嘲笑するかの如く、現代の星間文明に根深く浸透しつつあるようだ。尤も、彼ら天人の宇宙の安寧に対する飽くなき情熱に関しては、今を迎えて再評価されつつあるものの我らの外交手法と比べれば遥かに過激であった。今にして思えば、その理念に関してあながち否定しきれぬ部分もあったのではないかとの声も聞こえるが…。とは言え、当時の天人を恐れる者も同じく存在している。我々は文明の統治者として、彼らの恐怖を無視する訳にはいかぬ。中央政府はその歴史的経緯から無用な紛争を回避するため、恒星帝国への外国人の入国を制限することに決定した。なお、これは鎖国ではないからして、入国審査の大幅強化であるとご理解願いたい。 カタ・コミュニティ 一部を除いては比較的穏やかな情勢を保っているものの、その歴史的経緯から某国に対する憎しみが消えるには至らない。無論、かつての対立国家にもそこに至るまでの正義があったのかもしれぬが、主義主張はどうあれ、惨状の傷が癒えぬ彼らに真の安寧が訪れるには、暫しの年月を要するであろう。中央政府としては安全保障上の理由から、当該コミュニティへの入域を厳に制限せざるを得ない。尤も、これはカタ系市民は元より、彼らと対立する可能性のある外国人を偶発的な危険から遠ざけるための措置でもあり、国際社会から理解を得られるものと信じている。しかしながら、カタ人をある種のゲットーの如く閉じ込めるための措置でもないことから、彼らの文明国内における自由行動を制限することはできない。従って、カタ人との間で禍根を抱く者に関しては、公安職員による厳重なるエスコートが必要だ。 地下プラント自治領 ツォルマリアにおける重罪人の行き着く先は、他の候補がなければ地下プラントしかない。その情け容赦のない浄化政策によって地獄に送り込まれた者は数知れず、今や名実共に冥土の象徴の如く怖れられているのが現状のようだ。尤も、その背景には彼らツォルマリアンにとって反社会的人物に対する独特の憎悪と、地下世界にて未だに巣くう悪鬼共への恐怖が見え隠れするのだが。ツォルマリアは祖国防衛の名の下に人道的に嫌悪していたプラント種族を受け入れ、以前にも増して増大し行く狂気を以て其の世界を圧倒した。毒を以て毒を制するとは、まさにこの事であろうか。それもこれも、プラント種族の強大なる力なくして実現し得なかったことである。そして今、独善的な人道主義者は全て駆逐され、ツォルマリアンと地下プラントの関係はある意味で良好なものとなりつつあるようだ。しかしながら、プラント達の母国であるランド・プラントは種の保全を行うにあたり、粗相が過ぎた。マザープラントが一度拒絶を示せば、対象の文化を焼き払うことに関して何の躊躇も慈悲もなく、結果としてあらゆる生命の憎悪を一身に浴びる結果となってしまったのである。但し、彼らを価値ある者として迎え入れ、共に戦った国も存在するが。何にせよ、我々中央政府としては、このような歴史的経緯から地下プラントへの入国制限を継続することに決定した。また、種の存続を願う地下プラント自治政府にも、その国益が犯されぬ限りにおいてはやむを得ぬものとして理解頂けることであろう。 ラノーザ共和国 彼の国において紛争の爪痕は生々しく、未だ完全なる復興には至っていない。ジェルビア連合軍の全面的な武力介入により、統合革命軍という未曾有の悪魔集団こそ殲滅されたものの、恐怖の色は当分消えぬことだろう。一部市民の間では外国人排斥の機運が高まっていることに加え、現在の共和国指導部はその政治的信条において年々過激さを増しつつある。それはまさしく、赤と呼ぶに相応しいのではなかろうか。…共産主義という呼称こそ控えるが、それは我々の知る赤そのものである。人口の割には、余りにも多くの血が流れすぎた。尤も、中央政府としては加盟国の自治権を尊重するため、内政不干渉の立場を取るが…。ジェルビア諸国の間ではかつての某国に対する怖れから赤に対する警戒感が蔓延しており、ある種の法的根拠を語ってはラノーザからの撤退を渋っている。ジェルビアの盟主たるフィンスパーニア王国による異例の根回しにより、召集議会の議決すらままならぬこの状況。決してラノーザの治安が悪い訳ではない。ある意味、恐ろしいほどに浄化されているのだから。赤とジェルビアと中央政府、この三者が合意に至るまで長い時を経ることになりそうだ。当然、ラノーザへの入国に関しては厳に封鎖せざるを得ない。 国交締結国 ※星団登録国のみ 国家名称 オーシア連邦共和国 ズェムリア帝国 幸福至上主義社会帝国 ゼクスランド スヘル=バルニッツァ首長国連邦 ポザラザカ共和国 アポピス 酒呑国家鬼ヶ島 ヴェルンフィシア共和政府 所属組織 カイバー防衛条約連合 締結条約 星間文明統一機構とズェムリア帝国との間で締結する友好経済安保条約 星間文明統一機構とゼクスランドとの間で締結する友好経済安保条約 星間文明統一機構とポザラザカ共和国との間で締結する平和友好条約 軍事 星間文明軍とは星間文明統一機構が保有する軍隊の総称である。陸海空宇宙の四軍の他、領域警備を主任務とする公共安全管理艦隊、専守防衛を主とするプラント独立軍が存在する。戦略軍、通常軍双方において高い錬度を保つ軍隊である。普段から中央政府の指揮下にある常備軍と、加盟国の管轄下にあり戦時に編入される自治軍、同じく戦時に編入される公安艦隊他、自治体独自の防衛組織などに大別できる。星間文明軍は文民統制の下に最高司令官である文明最高評議会議長が統帥する。 そして同じく文民である防衛部長が最高議長の補佐役として防衛部を統括し、具体的な軍事作戦計画の企画などは議長と筆頭補佐官、または国家戦略部と傘下の管理局から成る統合参謀本部が行い、各軍に伝達する。星間文明軍は次の6つの軍種からなる。その中の陸海空宇宙の四軍は防衛統括部の管轄下に属している他、公共軍は文明最高評議会議長の直接統制下にある。プラント独立軍はその性質上、自由軍として区分けされているが、防衛部との間に上下関係はないものと定められている。なお、近年においては公営の農場プラントによる大規模な供給に加え、ゼクスランドより大量のレーションを購入している他、一度は削減された防衛艦隊も軍需産業の増強によって再び数を増しつつあるようだ。また、他の改変種国家と比較して数に劣る攻撃戦力の増設配備も計画されており、その総合的な軍事力においては既に相当の武威を誇るものの、尚も拡大の一途を辿りつつあるという。 地上軍務局 連合陸軍 惑星内における多国籍陸軍。地上世界の他、上層や地下世界などの防衛も担当している。 ●人造兵士(人間戦車) 旧パンスペルミアにおいて開発された最凶最悪の人造人間(その強力な戦闘能力から、人間戦車という名称が用いられている)。導入当初は大規模な生産計画が立案されていたが、その仕様上ある程度の人格が備わっている事に加えて自爆機能も付加されている事が問題となり、頓挫したという黒歴史を持つ。そのため、中央政府としては国民感情を深く考慮し、専ら極一部の精鋭部隊に組み込むなど極秘裏での運用が行われている。 名称 種別 内容 支援戦闘員 パンスペルミアオリジナル 霄龍大公国の技術指導に従って製作されたプロトタイプ。作戦の内容によって編成が行われている。 HB-CN-021ビオラ 砲撃戦闘員 従来のシリーズに比べて積載量と攻撃能力が大きく向上しているが、その分単体の理解能力が低下しているため運用には慎重を要する。 HB-AN-011クッキー 突撃戦闘員 旧型よりも強力な武装に加え持久力と機動力が大幅に強化されているが…性格に難あり(好戦的な者が多いという)。 HB-AN-021アオバ 遊撃戦闘員 現行のシリーズでは最も高い機動性能を誇るが、その他の能力ではクッキーよりもやや劣る。敵部隊を撹乱するのが目的。 HB-021Kトタノ 指揮戦闘員 最強且つ高コスト。プロトタイプであるトコ(強襲能力)、タマ(索敵能力)、ノブル(指揮能力)の性能を兼ね備えている(強化済み)。 ●人型機動兵器(陸上仕様) 支援戦闘機 パンスペルミアオリジナル(WGシリーズ) プロトタイプ。作戦の内容によって編成が行われている。 LW-021ヴェルデ 汎用突撃戦闘機 対地戦特化型の重装機動兵器。機動力及び旋回性能の向上に加え、専用の全方位ブースターが装着されている(後ろに倒れこみにくくなった)。また、悪路における滑走が可能になるなど、その性能は大きく向上した。しかしその一方でエネルギー効率が大幅に犠牲にされているため、補給物資の備蓄が必要不可欠になるなどコストの上では問題点が残る。 LW-041ヴルメリオ 汎用電子戦闘機 対空戦特化型の重装機動兵器。四足歩行。旋回性能はヴェルデ以上且つ滑走可能。また、広域レーダーを備えつつ耐久力も大幅に向上した。 LW-091sトロヴァオ 汎用支援戦闘機 対地空戦用に開発された重装機動兵器。非搭乗式半自律行動様式。性能は可もなく不可もなくその他の支援機として位置づけられている。 連合海軍 惑星内における多国籍海軍。 連合空軍 惑星内における多国籍空軍。 公共安全管理局 公共安全管理艦隊 公共安全管理局が有する航宙艦隊。所属する隊員は白を基調とした制服と青のネクタイを着用している。 主な任務としては掃海活動や交易船の護衛、海賊討伐など、専ら領域内の秩序を維持する事に終始している。 状況によって正規艦船との戦闘も可能だが、基本的に前線に出向く事はない。 宇宙軍務局 統合宇宙軍 統一された宇宙軍。所属兵士の殆どがスペースノイドであるが、それだけに惑星内の軍隊を見下すような風潮も根強いという。 主に惑星圏の防衛を担当しているが、現代においては最も重視されているため、軍事予算の割合では常に80%以上を占めている。 また、外征能力も備わっており、深宇宙における長期の作戦にも対応可能となっている。 ●人型機動兵器(宇宙仕様) WS-011Pサフラ 汎用防宙戦闘機 無重力対応型戦機の完成第一号。従来の装甲に加えて武装が大幅に強化されているが、その分電子機器が省かれている。連携必須。 WS-012Pアフマル 汎用突撃戦闘機 無重力対応型戦機の完成第二号。攻撃力、防御力、機動力、旋回力等、平均的に強化されているが、その継戦能力においては不安が残る。 WS-013Pドゥルドゥール 汎用電子戦闘機 無重力対応型戦機の完成第三号。電子戦特化型として開発されたが、その分脆弱な仕様となっており、攻撃能力も極めて低い。連携必須。 WS-014Pワハシュ 対艦戦闘機 無重力対応型戦機の完成第四号。脅威的な攻撃能力と射程能力を備えているが、その他の部分が非常に脆弱な仕様となっている。連携必須。 WS-01Aレクス 汎用戦闘機 無重力対応型の完成第五号にして文明初の有力機。一部の電子能力を除いては概ね優秀な性能を誇るが、コストがとんでもなく馬鹿高い(ニュータイプ仕様)。そのため、現在二機のみの運用となっているが、両者ともに中央政府のお膝元に配備されているという。状況に関わらず護衛機としての性質が強く、その有用性が疑問視されている。 ●スーパーロボット BR-01Aソムニウム 戦略爆撃機(大量破壊兵器) 文明機構が誇る絶望(トンデモ兵器)の一つ。全高約102m、主武装として背部広域ビームポッド6問(BR-01B)、副武装として腕部対艦ミサイルラッチ(BR-01M)、補助武装として多目的ライフル(BR-01R)を装備。ベラメーラ元環境部長(救国人道軍総帥)の愛機を強奪改修し、大幅に強化したというレトロなロボ。死ぬ事が前提の特攻仕様らしい。 ●ミサイル ヴァラノルカの絶望 星間弾道ミサイル(大量破壊兵器) 280余年前の遺物。当時の独立研究機構(現在のロマクト社)によって開発されたものだが、核戦争の終結に伴い一度封印された(その管理国はサンパレナ共和国)。 しかし、開国後の情勢悪化を受け、正式に再配備となる。また、近代改修が加えられた事により、補助ゲートを介して敵国領内を破壊しつくす事も可能となってしまった。人類最悪の凶器。 ●第3機動艦隊旗艦トニトルス 創世記において始祖達が開発したと思われる全長約4000mもの古代戦艦。地下世界に纏わる大破壊の後に、自立システムがプログラムされたものと予測されている。かつては地上世界の航空機が一定の高度(=宇宙空間)に達すると、無差別にレーザー砲を放った事から天の裁きの如く大いに恐れられていた。ヴァラノルカにおいて上層世界が構築されるに至った元凶の一つとされる。しかし、開国以前の大規模な軍事作戦により、多くの犠牲を払ってシステムの掌握に成功した。現在は軍事衛星と同列の重爆撃艦として運用されており、その武装も年々強化されつつあるという。性能、装備ともに軍事機密のため、詳細は不明である。 ●ナイトメア級ティアフルドリーム 第6機動艦隊旗艦シュトゥルム F.G.T.Uより贈呈された名誉ある宇宙戦艦。能力レベル4を誇る。 ●第7機動艦隊旗艦キュアノエイディス ロマクト社によって建造された全長約2000m級の宇宙空母。ワープ巡航速度:空間歪曲型の21(ゲート機能必須)、機動職員:3451名(整備士含む)、砲手 1620名、施設職員 3105名、戦闘員:14316名、他1000名弱。武装:16連装ブラストレーザー2基(長距離仕様)、イグニス・ギガキャノン300基(中距離仕様)、40mmガトリング砲1000基(短距離仕様)。搭載機:防宙戦闘機300機、突撃戦闘機500機、陸戦用戦闘機200機、人間戦車300体、30式重降下艇100機、他多数搭載。元は外宇宙での長期探査を目的として開発されたものだが、新政府の目に留まり改修されたという。艦長はマート・バウチャー上級大将で、ジャヤ・ブレンバ中佐が副長として補佐を勤めている。近年においては、パンスペルミアにおけるポールシフトの調査のために派遣された。武装を除く全ての性能がトニトルスを上回るらしい。 ●プリンセス・センプリチェ級早期警戒電子戦管制艦 第1防衛艦隊旗艦ゴルヴェドーラ(一番艦) F.G.T.Uより贈呈された名誉ある高機能艦。本星圏内における防衛指揮を司る。耐久力は6。 第47防衛艦隊旗艦ツォルマール(二番艦) F.G.T.Uより贈呈された名誉ある高機能艦。文明圏内における防衛指揮を司る。耐久力は6。 管轄区域 ディルタニア方面軍-オーガン担当 フェイルディラシア方面軍-エルトリルディス担当 セイルナシア方面軍-ポリューテッド担当 ネルヴィル方面軍-カラード担当 カイバー方面軍-ツォルマ、霄龍、オーシア担当 プラント独立軍 地下プラント自由軍-ヴァラノルカ担当 広域での行動に転じる事も可能だが、高度な政治的事情により制限されている。